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2014年3月18日火曜日

Masters Class 1 – ハイヒールで駆け抜けろ:Evelynnに許された唯一の力学


Cloth5.comさまに掲載されたKyrie氏著の“Masters Class 1 - Running in Heels: Evelynn's Unique Dynamics(ハイヒールで駆け抜けろ:Evelynnに許された唯一の力学)”の訳です。


(訳注:"Running in Heels" はアメリカで放映されているファッション系リアリティ番組のタイトルでもあります)

Masters Classへようこそ!


OGN Mastersの試合を事例として用い、興味深い競技シーンのプレイのトピックを考察する解説記事シリーズ、それがMasters Classだ。この最初のMasters Classでは、独特の影響力を発揮したEvelynnの試合と、Evelynnについて構築された固有の戦略について、議論していこうと思う。


Evelynn, The Widowmakerの紹介


これほどまでにpick/ban率の両方が極端に上下するチャンピオンは、Evelynn以外にはいない。Season 4の競技プレイにおけるEvelynnの現在の地位は、Riotのバランス調整チームにとって相当な成功の範疇に入るだろう──韓国ではEvelynnのpickは多いが、時折しかbanされていない。一部の地域では一定のプレイヤーがEvelynnを用いて成功を収めている一方で、チャンピオンプールにEvelynnを入れても実際の不利益はないのに、他プレイヤーはEvelynnを無視している。Evelynnのバランスは、デザインの核となっている独特のステルス能力であるパッシブによるところが、より一層大きくなっている。Vision Wardの変更により、Evelynnは絶望的に強くなると予測した人は多かったが、このようなシナリオが実現することはなかった、というのもEvelynnが現在のポジションに収まる前のシーズンの始めに幅広く使われたからだ。

Evelynnがプレイされるに従って消えていった理由には、いくつか鍵となる要因がある。その中で最も重要なのは、熟練したチームがEvelynnに対するward設置とレーニングのパターンに適応、学習した、ということに他ならない。メタにおける他のジャングラーと比べた時の1対1の戦闘の弱さと相まって、試合序盤にEvelynnの動きが追跡可能になると、組織的かつ攻撃的なチームにとっては、試合のテンポをEvelynnに支配させず、その働きを中和することが可能になるのだ。新シーズンではKinkou(訳注:Shen、Akali、Kennenの3チャンピオンのこと)たちが好まれなくなり、鍵となるShenとの「潜在的な」シナジーが失われたこともまた、Evelynnへのマイナス要因となった。敵の脇腹を突く、Evelynn独特のアドバンテージを得る方法は、信頼できるものではなくなってしまった。しかしながら、どんなカウンターが現れようとも変化に適応できるよう、Evelynnのプレイヤーたちはこのような努力を重ねてきた理由が、このこれ見よがしの側面攻撃能力にあるのは明らかだ。試合序盤でEvelynnが成功するためには、敵チームがward設置に失敗し、その他の点で適切な対応を取れなかったかどうかに依存するものだ。だがEvelynnプレイヤーたちは、Season 3で彼女が果たしていた役割である準APキャリーとしてではなく、タンキーな集団戦イニシエートチャンピオンとしてのビルドを行うことで適応してきた。戦略がどんどん刷新されカウンターされていく中で、あるチャンピオンが素晴らしい輝きを放ったり、反対に衰えていったりする様子の際立った例として、今シーズンで最も面白いチャンピオンのひとりがEvelynnなのだ。


影のゲーム・第一部 – レーンスワップ


高レベルなソロキューと、真に組織的なプレイの間に存在する、最大の差異のひとつは、レーン配置の柔軟性である。Evelynnのいる試合において、この特性より重要なものは存在しない。レーンスワップしている状況においては、序盤に3対1のダイブ可能な状況を作ることは、どんなジャングラーにとっても十分チームの役に立てることだ。一方、Evelynnは与ダメージと、Lee SinやEliseが持つ機動性の双方に欠けている。さらには、EvelynnはHate Spike(Q)でのミニオンウェーブ処理能力に長けているものの、ステルス能力が無駄になるため、ジャングラー間のタワープッシュ競争では明らかに劣っている。かくして、タワーのAR値変更により有効性は低くなったものの、序盤の影響力の行使とタワー数の不利の間で決断を迫るという点で、レーンスワップはEvelynnに対して未だに考慮すべき価値ある戦略である。このプレイのお手本となるのが、Week4のOzone対Swordの試合で見られた。OzoneはFiddlesticksとSivirのデュオをtopに送り込み、Kha'Zixとともに速やかにタワーを折った。Evelynnを擁するSwordに対応手段はなく、序盤の居場所を的確に把握された結果、より頑丈なtopのタレットへとラッシュを受け、Ozoneにとってはとても価値のある、時間の損失を受けてしまったのだ。


このようなラッシュ・シナリオに近い場合、最初のタワーが折れた後、普通は両方のチームが2本目を折ろうとする、チキンゲームへともつれ込む。各チームのmid lanerは、普通は横のレーンへタワー防衛のために移動するだろうし、他方で敵にリコールを強制するために3対2の戦いに打ち勝とうと、速度のアドバンテージを築き上げようと目論むだろう。このケース特有なのが、両チームのinner turretがお互い数秒以内に壊れるということだ──これは再び、Evelynnのroamがさらに遅れてしまった、Swordのアドバンテージとなる。


長時間のレーニングフェーズ(この試合では、inner turretは約6分で壊れたのだ!)を作ることにより、そういったレーンでファームしている目標をEvelynnがgankする明確な機会ができる。一方で、Ozoneはドラゴン側の川の入り口両方にpinkをすぐに設置し、川を越えてプッシュしないようにするという、Evelynn対策をまことに心得た動きを見せ続けた。

この非常に高い技術の、objectiveベースの試合運びにより、20分時点までの両チームのキルは0という結果をもって、Ozoneは安全に試合中盤へと突入した。その時点から、実際にタンク(Shyvanaはビルドの初手にBotRKを選択、ジャングラー運用のEvelynnのビルドは遅れるのが当然)を擁さないSwordに対し、レイトゲームで打ち勝ちがたいまでにリードを大きくするため、Ozoneは理想的な集団戦を強いることができた。素早いプッシュ、タワー中心の序盤といった展開を強いられると、Evelynnには為す術がない。しかしながら、この戦略で特に重要なことに序盤の両チームを互角にするという狙いがあることだ。そうすることで、何人かのレーン担当の強みとEvelynnの見えないgankという、レーニングフェーズのアドバンテージにカウンターするのだ。かくして、レーニングフェーズ後のEvelynnの長所を全て打ち消し、効果的に中盤の戦略へと繋げることができる。


影のゲーム・パート2 – ward設置とインベード


2対1の速攻プッシュと比べた時、もっとEvelynnに向いているのは、長引いたレーニングフェーズ……特に2対2のレーンをgankすることができる、標準的な構成である。ファームのためにEvelynnのステルスが解除される時、ジャングラーがインベードを行い「W(wraith、wolf、wight)」のキャンプにwardを置くことで、これに対してベストな反応が可能だ。Week 1 Mastersの対CJ Entus戦で、Jin Airはこのward設置戦法を採用し、その過程で序盤にNunuがインベード、wolfへwardを設置した。


インベードされた時の1対1の戦闘に弱いという弱点を突くことで、Evelynnに対して直接的な対策が可能になるのがこの方法である。だが、これは継続的なward網の維持に大きく依存しており、束の間の視界の消失ですら致命的になりうる。まさしく、Evelynnがキャンプのモンスターを倒す前にwolfに置いたwardが消えた瞬間、Captain Jack選手にそれが起こった。Jin Airのbot laneはいつgankが致命的になってもおかしくないほどの無理をしており、レーニングフェーズのほとんどを追い回されるという結果になったのだ。


Evelynnに対しては、攻撃的なward設置とインベードが大きく求められるが、2対1の速攻プッシュを安全にするため、この戦法を選択するチームも多い。Evelynnを試合展開から十分に置き去りにすることで、レーニングフェーズの有利をそのまま試合自体の勝利へ繋げられる可能性がいくらかあるからだ。キャンプのモンスターを倒す時、Evelynnはマナが少なくなりやすい。これはパッシブのmana regenが、マップを縦横無尽に駆け回る間のみ有効なためだ。2度目の赤バフが湧く時にタイミングを合わせて2人でインベードを図ることにより、Jin AirはDayDream選手相手にキルを決め、この利点を大きく削ぎ、Evelynnに対する直接的なインベードがいかに効果的かを示すこととなった。


Masters Week 2の対NaJin戦において、赤バフ取得後のEvelynnをLeBlancとViで捉えたKTもまた、インベードで成功を収めている。


概して、gankを成功させられる程度には熟練した、もしくは運のいいEvelynnプレイヤーに対しては、ward設置+インベード戦法が未だに有効である。しかし、ジャングル内でEvelynnが脆い内に成長を阻止することは、平凡な2対1の速攻プッシュよりももっと、多くのチームが追求する価値のある褒賞である。ジャングルでは脆いが強力なgankerとしてEvelynnを考えれば、マナの少なさ、1対1の戦闘の弱さ、独特のステルス能力に由来するgankからの撤退の難しさといった弱点を心得た上で利用する、以前使われていたスロースタートな……Amumuのようなチャンピオンに対するアプローチをチーム全体で用いればよい。


全てはあまりにも簡単──新しいプレイ標準


レーンスワップやward設置+インベード戦法がEvelynnに対して用いられるかどうかに関係なく、Evelynnの序盤の強力さは、高い機動性とダメージを持つLee Sin・EliseやVi・Kha'Zix・Wukongのレベルにすら達しない。序盤にキルを獲得できた場合は完全に試合の流れを持っていくことができるが、これには独特な困難さが伴う。プロチームが則るべき、最低限のセオリーをもってすれば、これを阻止することは可能だ。効果的・一般的な知識の両方の面からカウンターされたとすれば、Evelynnの人気は完全に落ちてしまうと思われる。だが、ひとつの大きな理由からこうはならない──Stealth Wardでの追跡ができないため、Evelynnのステルス能力はレーニングフェーズの後に真価を発揮し始めるのだ。この点において、Agony's Embrace(R)により、ゲーム中最高の側撃要員としての地位を確立しているのが、Evelynnなのだ。この良い例を見ることができるのが、Week 3のBlaze対T1 S戦のハイライトだ。H0R0選手は他チームメイトにアプローチするための正しいアングルに位置取ることを継続的に心がけ、集団戦のイニシエート、カウンター・イニシエートだけではなく、タワーを壊すために移動してきた敵との戦闘についての能力までも示した。この状況では、H0R0選手はEasyhoon選手が青バフを取っている間の戦闘の可能性を忘れず、標準的かつ正しいアングルの位置取りにより、Agony's Embraceの大ダメージでBlazeのエンゲージを遮り、Zyraがrootとultimateを放つ間に、敵のLucianとOriannaを直接攻撃することが可能だったのだ。このサプライズ・アタックの恐怖は、大きく距離を詰めてエンゲージしてくるであろうチーム構成にとっては、多大な抑止力となる。Evelynnによる脇からの分断攻撃は、敵キャリーを孤立させ、防御的な行動を強いるのにとても役立つ。キャリーがダメージを出す余裕を作る、圧倒的なエンゲージ能力を頼みにするダイブ構成にとっては、Evelynnはまさに災いそのものなのだ。


Season 3でのEvelynnはAPダメージ偏重のビルドを行っており、生存性に寄与するアイテムはZhonya's Hourglassのみだった。対して、ここ最近のWidowmaker(訳注: evelynnのふたつ名)は、無視できない程度のダメージを出しつつも、自チームのために戦端を開くという役割を果たしている。唯一のダメージアイテムとしてSpirit of the Elder Lizardにラッシュすることで、序盤のgankを強力にし、中立モンスターを効率よくキルすることを目指す。このビルドの注意すべき点は防御的だということで、状況に応じてBanshee's Veil、Randuin's Omen、Sunfire Cape、Spirit Visage、防御的なブーツのいずれかが混ざることに注目したい。このように防御を固めたEvelynnが行うのは、現在のメタを定義するダイブ構成に基づき、分断攻撃を行うことと、Agony's Embraceで戦端を開いた後は優先度の高い対象に貼りつくことが大半である。人数が徐々に減っていく戦闘においては、Ravage(E)の攻撃速度増加によって敵キャリーを削り、続けてDark Frenzy(W)を使えば、Evelynnは敵の裏をかくことができる。目標の位置が広い範囲に広がる集団戦であっても、集団戦を続ける能力を持っているのだ。

自チームの構成との間に生じるダメージの差を埋めるため、Evelynnのビルドにはさらなるダメージへの投資という選択肢を取れるだけの柔軟性もある。BotRKとMaw of Malmortiusを上手く使うことができるからだ。APアイテムはかつて人気があったが、Evelynnのビルドでの人気が復活するには、魔法ダメージ主眼のビルドを行った時、Evelynnの価値がもっと高くなるようなメタ変更が必要である。ステルス能力と、すばらしく多彩な能力という、他にない強さにより、Watch選手やBengi選手のような名高いジャングラーにとっては、Evelynnは好まれるpickであり、ban必須であり続けるだろう。しかし、序盤の脆さから、EliseやLee Sinのような、より平凡なチャンピオンの方がもっとやりやすいプレイヤーにとっては、Evelynnを相手取る時に自信のあることもあるだろう。そうは言うものの、韓国においてEvelynnへの注目は高まりつつある──過去2週間にMastersで行われた多くの試合において、Evelynnは必ずpickかbanいずれかの対象になっている。タンキーなtop lanerから多様化するメタの様相として、Evelynnの行く末は非常に面白いものとなるだろう。


原文
Cloth5 | Masters Class 1 - Running in Heels: Evelynn's Unique Dynamics by Kyrie

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