5月の頭に行われたMID-SEASON invitasionalを振り返り、その全容を紹介する記事になります。
■はじめに
先日開催されたMID-SEASON
invitasionalは中国のLPLから出場したEdward
Gamingの優勝という形で幕を下ろした。
EDGにとっては、世界規模の大会での初優勝という快挙であり、中国のLoLログイン画面には「登頂世界之巔」とその成果が大きく報じられた。
しかし、彼らの優勝を予見できた人はどれ程いただろうか。(あるいはprophet
Crumbzですら、それは困難だったのでは?)それほどにSK
Telecom T1への前評判は厚く、IEMで優勝を果たしたTeam
SoloMidへの期待は高まっていたように思う。
それでは、何がEDGを優勝へ導いたのか、MSIという舞台で私たちのよく知るSummoner's
Riftに何が起こっていたのか、要所を振り返りながら紹介していきたい。
■SKTを崩した一手
S3のWCS王者であり、"GOD”と呼ばれる男、Faker選手が所属することで知られるSKT。
MSIに置いても、彼らの優勝を予測する声が大多数であり、2日間のグループステージを5-0の単独首位で勝ち抜いた彼らの優勝は、不動のものかと思われた。
しかし、準決勝でのvs
Fnatic戦において、SKTは5試合に渡る苦戦を強いられることになった。
BO5の初戦は難なく勝利したSKTだったが、2試合目からは雰囲気が変わってくる。
これはFnaticが行った”ある作戦”がもたらした成果であり、この作戦が成功した時、SKTは試合の主導権を掴む事が難しくなっている兆候が、MSIの決勝戦に至るまで見ることができた。
その”ある作戦”とは、序盤のJunglerの行動の封殺である。
詳細は各試合によって異なるが、vs
Fnatic戦の2試合目の場合を紹介する。
両チームのJungleはFNCのReignover選手はGragas、SKTのBengi選手はRek'Saiを選んでいる。
両者ともGrompそしてBlueBuffを狩る所からJungleをスタートしたが、その後の動きが異なった。
Bengi選手がその後Wolf>RedBuffと狩りに行ったのに対して、Reignover選手は即RedBuffへと向かったのだ。
更に、Bengi選手がWolfを狩り終わりRedBuffへ向かおうとするタイミングで、FNCのTOPプレイヤーHuni選手のRumbleがSKT側RedBuffへWardを設置した。
これによりFNC側はBengi選手の位置を把握、直ちにBOTレーンにReignover選手をGANKさせFirstBloodを奪っている。
画像はHuni選手がBengi選手をRedBuffで確認したところ、Reignover選手はすでにRedbuffを狩り始めている
こうした視界の確保から次の一手へ繋げる動きで、Bengi選手のプレッシャーを軽減し、先に有利をとることで、試合の主導権をとる事に成功したのだ。
もちろん、SKTはこの一手を決めれば勝てるような甘いチームではない。例え劣勢であっても卓越したマップコントロールにより、不利な現状を感じさせないプレイを見せていたからだ。
そうした高い技術からも感じられるように、序盤に大きな有利を掴んだSKTは、正直言って”難攻不落の要塞”である。
そうさせない為に、序盤大きな影響力を持つJungler、Bengi選手の動きを封じることが、SKTに勝利するために必要な”最初の一手”だと、準決勝そして決勝戦の内容から感じ取ることができたのだ。
■Junglerの選択肢
MSIが行われているPatch5.7はTank
Metaと言われており、選ばれるJungler達は以前から一変した。
Warriorと相性のよかった火力を積むタイプのJungler達は鳴りを潜め、Cinderhulkと相性のいいTank系Junglerが森を独占したのだ。
MSIで登場したJunglerはRek'Sai、Gragas、SejuaniそしてNunuがほとんどを占めた。
Rek'SaiにいたってはPick
or
BANで28試合中全てに登場し、勝率も60%と非常に高い数値を出している。次点で、Gragasが24試合に登場し、この二体の対決が11試合も行われたのだ。
彼らは総じてレベルでAR/MRが上昇するTank向きなChampionである。
更にTrueDamageやHPの割合でダメージを与えるスキルを持っていたり、アイテムに依存しなくともJungleを素早く周れる性能を有している。
つまりはCinderhulkと相性がいい、Healthというディフェンシブなアイテムを積みながらもJungleを素早く周れる、ダメージも出せる、そんなChampion達だ。
こうした中で、彼らの中から”誰を選ぶのか”その優先度を分けたのは一体なんだったのか。
それは結果から見れば”序盤のlaneへの影響力”だった。
Rek'SaiそしてGragasはレベル3からBlink+CCの強力なスキルセットを持ち、尚且つ1度のRecallを挟まずにGankが可能だ。
その点で、Sejuaniはこの二人を相手取った場合に遅れをとりやすい。lvl3になった後、GankをできるほどのHPを残しておくのが彼女には難しいからだ。
そしてNunuは前記した3名とは、そもそも用法が異なる。Nunuを選択した場合に取られる作戦は”序盤のObjectへの影響力”を重視するからである。
では、Rek'SaiとGragasこの2体を分けたものは何だったのか。
恐らくはRek'Saiにしかない強力なマップコントロールとアイテムの幅ではないかと推察する。
彼女が地面に潜っている間に発動するソナーは、安全に敵Jungleへの進入を可能にし、設置されたWardやTunnelにより相手のJunglerの位置を把握、味方はそれを考慮してリスクを少なく次のアクションに移る事ができる。更に中盤以降にはULTがあればSpilitPusherとして敵にプレッシャーをかけることも可能だ。
そして、Rek'Saiだけが戦況しだいではWarriorを持つことでsnowballを加速する戦い方ができるのだ。
EDGが最終戦で見せたEvelyne、そしてLeague登場以来初めて影を潜めたLee
sinについても、今後は注目していかなければならないだろうが、今はまだVoidの女王が森の覇者であることは間違いなさそうだ。
■MIDのサモナースペルの変化
MidのサモナースペルといえばIgniteそしてFlashが定番であると、そんな時期もあったが今現在そのバリエーションは様々だ。そんな中でMSIで見られた選択肢がCleanseだった。
これを選択していたのは主にCassiopeaやAzirといったLategame
Carryに多かったが、驚いたのはLeBlancでもCleanseを選択した試合があったことだ。
CleanseはIgniteのようにLaneでの有利を取れるスペルではないが、SejuaniのULTやMaokaiのWなど強力なCCを即座に解除できることから、チームファイトにおいて大きく作用する。
この選択肢を生み出したのも、CCはないが火力の高いChampion達が少なくなり、強力なCCを持つTank系Championが多く登場するようになったからではないだろうか。
■Urgotの存在
MSIでのUrgotのPick
or BAN率は96%に及ぶ。
彼はAD
Ranged Carryでありながら非常にTankyなchampionだ。
マナスケールのシールドを持ち、与ダメージの低下DebuffやARの低下、更には強力な単体CCまで持っている。
Manaの総量とCDRを増やすことでダメージを稼ぐことができ、FrozenHeartと相性がよく自身がADCでありながら対ADCに非常に強い。
しかし、通常攻撃のRangeの短さという根本的な大問題が彼を前線から退けていた、はずだった。
そんな彼をMSIという舞台に立たせたチーム構成は、殆どがTankで構成されたHard
Engageチームでmidgameに重点を置いた戦い方だった。
Gragas、Thresh、Nautilus、Alistarといった強力なCCによるPickUPから集団戦に発生させ、中盤から有利を積極的に広げていく戦法で多くの勝利を生み出している。
Urgotに至ってもULTがレベル3になれば850という長い距離で敵を捕らえ、尚且つ自身はARとMRが120も上昇するので前線にも飛び込んでいけるのだ。
この押し寄せてくるTank達を倒すにはLateCarryの存在が必須となってくるのだが、各チームは4TankにLeblancを加えて敵のバックラインへの圧力を増やしたり、Azirを加えることで自分たちもLategameとSiege面での強さを補強したりと一筋縄ではいかない戦力の広さも見ることができた。
加えて、忘れてはならないのが、UrgotはKalistaのCounterとして機能するということだ。
KalistaはPatch5.7におけるADCの中でTier1の評価をされており、ADCの中ではUrgotと並ぶ10回以上BANされている唯一のChampionである。
このKalistaに対してUrgotの持つULTとFHをビルドに組み込めるというユニークが、集団戦において彼女に大きく作用するのだ。
これもUrgotが選択される大きな要素となったのは明白である。
現在のMetaにおいて、Urgotは戦略の要素を担う強力なChampionの1人へと変貌を遂げたのだ。
■まとめ
総じて、MSIは”Tank
Metaとは何たるものか”ということを余すところなく、私たちに見せてくれた大会だったと言えるのではないだろうか。
Tank
MetaはJunglerのPickを一変させ、Top
laneにSmite+TPという新たな戦術をもたらし、更にはUrgotをADCに置くAll
Tank構成まで登場した。
しかし、Patch5.9では既にCinderhulkのlane戦に置ける弱体化が適用されており、RIOTがSmite+TPというTOPの現状にテコ入れをしようとしているのは間違いないだろう。
Summoner'sRiftを自由に駆け回るHecarimの存在や、そのCounterとして抜擢されたFrozenMalletを携えたGnar。最終戦でEDGが見せてくれたEvelynn、強力なTank達に対抗すべく登場したAzirやCassiopeiaといった強力なAP
LategameCarryたちの活躍。そして、影を潜めたADAssasin・・・。
このMetaが今後どのように変わっていくのかは、未だわからないが各国のSummerシーズンを控え、新たな戦略や可能性の発見が私達の心を躍らせてくれるのは、確かではないだろうか。
参考リンク
監修協力:Revol氏