LoLeSportsに掲載された、日本のチーム「CROOZ Rascal Jester」を紹介する記事“A new kind of gamer: Japan aims for the pros”の訳になります。
A new kind of gamer: Japan aims for the pros | LoL Esports
記事翻訳にあたり、Rascal JesterとパートナーのCROOZ株式会社よりコメントをいただいております。
最初はLeague of Legendsの公式Webサイトに掲載されるインタビューだとは思っていませんでした。日本のチームとして初めて公式メディアの記事に取り上げて頂いた事をとても光栄に思います。日本でe-Sportsという文化が広まるにはまだ少し時間が掛かると思いますが、今後発展していく日本のe-Sportsシーンにおいて、プロを目指す人たちの手本となれる様にこれからも頑張ります!
RJ メンバー一同
この度公式サイトへCROOZ Rascal Jesterの記事が紹介されたことを非常に喜ばしく思います。また、本記事を寄稿してくださったCameron Gilbert様、翻訳をしていただいたあおれんじゃ様、Game 4 Broke様に深くお礼申し上げます。
本記事にもあります通り、CROOZはゲーム事業においてゲーマーの新たな可能性を模索し、RJには先駆けとして高いリテラシを活かしてゲーム開発の場で活躍してくれることを期待しています。そして今回のような形のパートナーシップを通じて、今後日本eSportsの発展に寄与し、ファンの皆様にはこれまで以上にご満足いただけるよう努力してまいります。
最後に、CROOZでは現在新卒採用を中心に、ゲームに情熱のある人材を広く募集しています、興味のある方は是非一度ご連絡ください。
CROOZ株式会社 諸戸 友
日本はPCゲーミング文化とほとんど疎遠だった。据え置き型ハードや格闘ゲームの方を好んだため、日本人ゲーマーは隣人の中国や韓国ほどPCゲーミング競技を受け入れられなかった。その結果、小さくはあるがLeague of Legendsに熱中する日本人のプレイヤーグループは、孤独な戦いを強いられていた。自分たち自身のものと呼べるサーバが存在しなくとも、日本人プレイヤーたちは自分たちのLeague of Legendsシーンを密かに形成した。今では長期に渡って開催されるリーグシステム、プロチーム、配信者、そして数百人の観客を魅了する秋葉原のオフラインスタジオまでもが設立されている。
数週間前、シーンの歴史に新たなる記念碑が打ち立てられた。日本最高のチームのひとつであるRascal Jesterが、さらに高いレベルのゲームを志すため、日本初のプロゲーミングハウスを持つことを発表したのだ。シーンの新たなる展開を切り拓いたことについて、チームキャプテンの小田桐 “apaMEN” 稜選手に話を聞いた。
いたずらっこの召集
多くのプロプレイヤーのように、小田桐選手も常にゲーミングに夢中で在り続けてきた。彼が据え置き型ハードからPCへと移行したのは、14歳の時だ。MMOから入った彼だったが、Sudden Attack、Counter-Strike、Special Forceといった競技的なFirst Person Shooter(FPS)ゲームがその心を捉えるまで、大した時間はかからなかった。それどころか、半年ほどの期間、小田桐選手はSpecial Forceで日本一のプレイヤーのひとりだった。World Championshipでの総合順位は、堂々の5位入賞だ。
League of Legendsへの転向は3年前、友人の勧めによるものだった。多くの新規プレイヤーのように、LoLへの転向は簡単なものではなかった。「LoLは私にとって初めてのRTS/MOBAスタイルのゲームだったので、最初の頃は全く勝てなくて、全然楽しくなかったんですよ!」と彼は笑う。「でも、プレイは続けました。必要な技術と知識が身に付いてくると、楽しめるようになってきたんです」
昨年12月まで、小田桐選手にとっては全てが遊びだった。友人たちといっしょに、彼は「PeachServerAllstars」というチームを設立した。このチームはLeague of Legends Japan League(LJL)へと進出し、その勢いはさらなる成功へと彼らを導いた。
チームはRascal Jesterと名を改め、小田桐選手とチームはLJL Winter Seasonで1位、Japan Competitive Gaming(JCG)Premier League Championshipで3位という成績を収めた。あいにく、LJL Grand ChampionshipではライバルチームであるDetonatioN FocusMeと接戦を繰り広げた末、準優勝という結果に終わった。だがそれでも、小田桐選手とチームはさらなる高みを目指している。Mid laneからジャングルに転向した彼は「次は日本最高のチームを目指します。名実ともに。」と断言する。
「ゲーマー」を再定義する
数週間前、Rascal Jesterは日本のインターネット企業であるCROOZと提携を結び、日本で初めてのプロゲーミングハウスを持つことを発表した。しかしながら小田桐選手は、ここまで来られたのは実績を積んだからだけではないと言う。むしろ、ひとつのチームとしての姿勢によるものだと。
「日本では、ゲーマーといえばゲームにハマっているだけの人間というイメージが強くて、ゲーマーであることは実社会では評価されません」と彼は説明する。「そのイメージが根強い限りは、どんな支援も受けられないと感じています。勝利は常に私たちの最優先目標ですが、勝つだけでプロゲーマーになれるというのなら、日本には既にプロがいるはずです。」
「態度が悪いと、どんな支援も受けられないことはわかっています。だから、Rascal Jesterを結成した時、きちんと[日本の]マナーに従おう、とチームとして決めました」と彼は語る。「その結果、私たちは様々な方々と知り合うことができましたし、CROOZからのアプローチという結果にも繋がったんです」
このアプローチは、日本市場の独特な状況に合わせられたものだった。CROOZとチームは互いに手を組み合い、勝利を目指すチームを作るだけでなく、全く新しい文化を作るという困難な課題に挑戦しようとしている。チームはひとつ屋根の下で日々の生活と練習を行うが、昼間の間、メンバーはCROOZで働くことも条件となっている。「ゲーマーはゲームを遊ぶこと以外、何もできない」という偏見を打ち砕くべく、CROOZはプロゲーミングに新しい先例──ビジネスの世界で働きつつ、プロとして競い合う、新種のゲーマー──を送り出したいのだ。
高みを目指して
Rascal Jesterの最近の活動は、ゲーミングハウスへの引越しを行っただけだが、次から次へと様々な活動が進行中である。小田桐選手にチームメイトに対する評を聞くと「全員がとても仲良く、上手くなりたいという意欲にあふれています。Rkpは標準的な日本人よりも並外れて背が高いです。Cogcogは可愛らしい顔をしていますが、いい性格をしています。ScottyとRainbrainはいつもいっしょだという噂があります。Lillebeltはみんなに大天使と呼ばれています。」
現在、チームは主に韓国サーバのRanked 5sで練習を行っているが、可能であればいつでも練習試合をしたいと考えており、地域にかかわらず、新しいパートナーを積極的に探している。今までは各個人がそれぞれの部屋に住んでおり、オンラインで集合しての練習しかできなかったが、全員がひとつ屋根の下に集うことで、以前にはなかったチームワークが生まれていると小田桐選手は感じている。戦略会議にはますますエネルギーが注がれ、ひとつのチームとして全体的なレベルを上げる道が見えてきた、とのことである。
好きな海外のチームを尋ねると、小田桐選手はSamsung Whiteを挙げた。「特にSamsung WhiteのLooper選手、Pawn選手、DanDy選手を見てインスピレーションを得ています。お互いのスタイルを理解し合い、チームを最優先に動いているのは素晴らしいと思います。いつか彼らと戦えたらと思っていましたが、バラバラになってしまいましたね。」
自分たちのレベルが国際的トップチームよりも低いことを認めてはいるが、Rascal Jesterはそのギャップを埋めるという決意を固めている。「世界という舞台で優勝したい」と彼は言う。日本人ゲーマーたちに世間の注目を集め、League of Legendsがどれだけ面白くなれるかを見せること、小田桐選手はそのために心血を注いでいる。「私たちのようなチームと、支援してくださる企業の皆様の力で、今は据え置き型ハードでゲームを遊んでいる方々もPCゲーミングに興味を抱いてくれるような、面白いものを作っていければと思っています。」
小田桐選手はチームの現在の力量について謙遜しているが、未来は明るいとも思っている。「海外のチームと比べると、私たちのレベルは高いとは言えません。でも、世界中のトッププロたちと肩を並べて戦えるよう、着実に強くなります。応援してくれるファンが誇りに思ってくれるよう、一生懸命がんばりますので、どうぞよろしくお願いします。」
日本のトーナメントは現在終了しているが、次のイベントが発表されれば、Rascal Jesterはウェブサイトでの告知を行うとのことだ。それまで、小田桐選手と他チームメンバーはTwitch.TVおよびニコニコ動画の両方で配信を行っている。チームのウェブサイトでは彼らのTwitchチャンネルを見ることができる。小田桐選手をTwitterでフォローしたいのであれば、こちらをどうぞ(日本語のみ)。
原文著者:Cameron Gilbert(@shirokaisen)
写真提供:水長浩美(スイニャン)(@shuiniao)