韓国メディア「FOMOS」にて、Sengoku Gaming所属のOgguGi選手のインタビュー記事が掲載されました。以下は有志による日本語翻訳になります。
今はもう歴史のなかに消え去ったWoongjin Starsというチームは、伝統的にプロトス(StarCraftの種族のひとつ)の名家であった。前身であるHanbit StarsにはGARIMTO選手とReach選手がおり、Woongjinに買収されてからはエースとして「雷帝」の異名を持つFree選手とGuemChi選手、必勝カードだったFlying選手が在籍。有望株のなかには、Free選手の後を継ぐ選手であると評価されたAria(現OdduGi)もいた。
2011年上半期のドラフトでWoongjin Starsの推薦選手として加入したOdduGiは、2013年には最年少選手としてプロリーグのロースターに登録。当時のプロリーグはStarCraft1(以下SC1)とStarCraft2(以下SC2)を並行して行われており、OdduGiはSC2で活躍していたKT RolsterのMotive選手を倒したことも。SC2の個人リーグであった「Challenger League」に勝ち上がったりもしたが、チームがなくなると同時に引退を宣言した。
人々の記憶から忘れ去られたOdduGiが再び姿を現したのは、2016年11月に開かれた「KeSPA CUP」だった。当時Rising Star Gaming(以下RSG、現VSG)所属として「KeSPA CUP」に参加しSamsung Galaxy(現Gen.G Esports)とのベスト12の試合に出場したが、0-2で敗れた。その後RSGを辞めたOdduGiは、日本の「League of Legends Japan League(以下LJL)」チームであるSengoku Gamingに加入。「LJL」 Spring Splitで活躍を見せ、Summer SplitではBlank選手とともにシーズンを戦った。
当時、Sengoku Gamingのオーナーである岩元良祐氏がBlank選手を加入させるために韓国を訪問した際に、OdduGiが通訳をしたのは有名な話である。「LJL」Summer Splitが終わったあと韓国で休暇をとっていたOdduGiは、我々FOMOSとのインタビューでSC1から現在までの話を聞かせてくれた。
――Woongjin Stars時代、Free選手に続くプロトスの有望株として注目されていた。この場を借りて、どのようにプロゲーマーになったのか話してもらえないだろうか?
最初にWoongjin Starsに入ったのは、中学3年生のとき。練習生としてチームに合流した。当時はアマチュア選手がプロゲーマーになるためには、「Courage Match」で入賞して準プロゲーマーになる必要があった。その後、準プロゲーマーだけで「プロ選抜戦」という試合を行い、その結果をベースにプロゲーミングチームが選手を選抜。僕は「Courage Match」には入賞できなかったのだが、当時はプロゲームチームが推薦選手として「Courage Match」入賞に関係なく有望株をチームに合流させられる制度があり、チームの手助けで準プロゲーマーに。タイミングがうまく合ったのだと思う。同期の2名とともにチームに入ったのだが、そのなかのひとりは現在SC2の選手であるImpact選手だ。
――SC2までプレイしていたと記憶しているが、突然LoLに転向した。
ずっと続いていたSC1からSC2に移行した時期があった。うちのチームはSC2の成績が本当に良く、スターターのみならずサブの選手も上手かったと思う。スターターの選手らが、その座を奪われるのではと心配するほどだった。個人的にSC2のランクのポイントも高かったのだが、チームがなくなるという話を耳にした。SC2を続けるには海外チームへ行くか、残っている韓国チーム(当時はSamsung Galaxy、JinAir Green Wings、SK Telecom T1など)に移籍するか――。色々考えたが、移籍をしても望みどおりのプロゲーマーにはなれない気がした。それが17歳(韓国式の数え年、満16歳)のときだった。
同時にOGNでは「League of Legends Championship(現在のLCK)」が行われていた。その放送を見ながら、「SC2がLoLのように人気があったらどうだっただろうか」と思ったことも。放送をたびたび見ていたら、LoLについて気になってきた。練習のときは他のゲームができなかったが、休みの日はPCバン(韓国式ネットカフェ)へ行って1、2戦ずつやってみた。レベル30まで上げるのは大変だったが、レベルを上げるのが楽しかったので少しずつゲームを続けることに。でもまだ高校生だし、「学校は卒業しよう」と思った。LoLはやるにしても、卒業までにプロゲーマーになれなければほかの道を選ぼう、と。ちょうど通っていた学校がデジタル高等学校だったので、ゲームをやっている友達が何人かいた。LoLに接するのは容易だったと思う。Woongjin Starsが解散したあと、自宅に戻ってシーズン3から本格的にランクゲームをしはじめた。そういえばシーズン2終了間際、キャラクター画面にいつのまにかジャンナの姿が……。勝利の栄光スキンだったが、当時はなぜもらえたのかわからなかった(笑)。
エピソードがひとつある。シーズン3の時にsOs選手(現JinAir Green Wings所属のSC2選手)とデュオでランクに挑んだところ、ブロンズ2に配属された。それでLoLは難しいゲームだと思ったが、本格的にソロでランクをしたらティアもシルバー、ゴールドと次々に上がった。ソロランクをする人はわかると思うけど、ランクを上げ続けてもいつかは壁にぶつかってしまう。SCの選手であった分、ゲームをどう動かすべきかはわかっているけど、いざやろうとしたら上手くいかなかった。周りの友達にLoLについて聞きつつ、学びながらプラチナまで到達。当時はダイヤ1の50ポイントなら上手い方だった。その後ダイヤ1の70ポイントまで上げられたので、LoLのプロをやっても大丈夫だろうと思った。
――ADCのロールを選んだ理由は?
僕の性格を考えると、SupportかJunglerが合っていると思う。でもLoLを始めたころはADCが強い時期で、シーズン2から3のころは、ADCが「キャリー」して回っていた。だから「主人公になろう」という考えでADCとして出発することに。誰かをサポートするより主人公として生きて行こう、と。僕さえ努力すればなんでも出来る――その姿が格好良く見えたし、いくらでも上達の余地があった。そういうところが良いな、と思ってADCを選んだ。
――それ以降、RSG所属として2016年の「KeSPA CUP」に参加した。
実はRSGに入る前は、中国3部リーグのチームで活動していた。一緒にいた選手はBen選手(現Top Esports所属)と、へカリム使いとして有名な古墳大将というサモナーネームの選手だった。韓国人3人中、チームではふたりだけが出場できるとのこと。僕とBenさんが残って、もうひとりは思い描いていたプロゲーマー生活と違ったということで韓国に帰国した。それで僕とBenさんが活動することになったが、今振り返ってみるとBenさんに申し訳なさを感じる。Benさんは当時も上手いSupportだったが、僕自身は上手いADCじゃなかったからだ。それでもチームは3部リーグ全勝で準決勝まで進出。あと1試合勝てば2部リーグの昇格戦まで行けるという状況で、問題が生じて大会に出られなくなった。我々に負けたチームが、僕らが違法行為をしたと中国公安に通報したのである。試合に出られなくなって、すごくがっかりした。チームから離れてBenさんは中国チームを探すとのことで、僕は韓国に戻ってチームを探すことにした。(以降、Ben選手はInvictus Gaming、Team WEで活動を続け、最近のSummerではTop Esportsで活躍)
韓国に戻ってからチームを探してる最中、GalBコーチ(元Damwon Gaming所属)が僕にRSGで選手をする考えがあるか聞いてきた。RSGはその前のシーズンを4位で終えたため、「KeSPA CUP」にも参加できるチームだった。同時に「LoL Pro League(以下LPL)」チームからの練習生テストのオファーも。中国に行くか、それとも「KeSPA CUP」に出るかで悩んだが、中国に行っても上手くいく保証がなかった。悩んだ結果、RSGと契約して「KeSPA CUP」に出場した。当時、RSGの初戦相手はSamsung Galaxy(現Gen.G e-Sports)。負けるとしても楽しみながらゲームしようと、みんなと話した。良かった場面はいくつかあったけど、満足できる結果ではなかった。
――OdduGi選手にとって、イジェギュン監督(元Woongjin Stars監督、現KeSPA)はどんな存在だったか?
今でも記憶に残る方。怖いところもあったけど面白かった。僕に楽しい思い出をつくってくれた監督。昔はすごく怖くて「僕に優しくしてほしい」と思ったときもあったが、今はプロとしてのキャリアも積んだので、当時の監督がなぜそういう風に接したのか理解できるようになったし、時間が経って「ありがたい」と思うようにもなった。2016年、「KeSPA CUP」の会場でも会ったが、久々の再会で懐かしかった。監督に「頑張れ」と励ましてもらってこみ上げるものがあったし、本当に頑張ろうと思った。今でも連絡を取り合っているが、その度に嬉しいと思う。恩に報いたい。
――RSGを経て2018年にLJLのSengoku Gamingに加入することになった。
RSGを離れた後、チームを探していた。色んなチームから声がかかり、そのなかでSengoku Gamingからも連絡があった。しかし相手はマネージャーではなく、同じチームだったSmile選手(現LJLチー厶 AXIZ所属)。「うちのチームがADCを探していて、『Challengers Korea(以下CK)』での活動歴もある君のプレイが気に入った」と言う。日本が近い地域だということもあって興味が湧いた。元々日本には昨年まで2部リーグがあったが、今年から2部リーグがなくなって1部リーグにさらに3チームが合流。Sengoku Gamingもフランチャイズ(長期的パートナーシップ)審査を受けているが、まだ確定ではないという話だった。Spring Splitが始まるのは1月10日頃で、審査の結果がわかるのは12月26日頃だ、とも。Smile選手と話したのは11月末から12月の初めだったので、3週間は待たなければいけない。悩んだし気持ちも落ち着かなかったが、Smile選手が僕にチームの運営会社の自慢をしてくるのが面白かった。良い会社だから入っても大丈夫だと言う。僕も時間があったので待つことにした。マネージャーとも話し、チームの選手たちとも一緒にプレイしてみたが、本当に僕に来てほしいのだと感じた。LJLへの昇格が決定した後、日本へ。日本に着くと、試合は2週間後だと言われた。他のチームは長い時間をかけて足並みをそろえただろうに、僕たちはようやく始まったばかりだったので心配だった。言葉の問題もあり、選手たちがソロランクを回しているときに僕は日本語を学ばなければいけないと思った。
しかも、コーチはカナダ人のMaplestreetコーチ。MidレーナーのTaka選手は日本人だが、オーストラリアに20年間住んでいたので日本語よりも英語の方が慣れている。Taka選手はコーチとは英語、他の日本人選手とは日本語、僕とSmile選手は韓国語で会話する。チーム内で3か国語を使い、とても大変だった。たとえば僕が何かを言うとSmile選手が日本語に訳して、それをTaka選手が英語でMaplestreetコーチに伝えるといった具合だ。これは本当に日本語を勉強しなければいけないなと思い、周りよりも速く習得した。初めてのMVPインタビューでは通訳なしで受け答えする部分もあった。僕たちのチームにはストリーマーがいるので、彼らの配信を見ていて知らない単語が出てきたら隣の席にいるチームメイトに聞くようにしている。配信を見ているときは、選手たちともたくさん会話した。ストリーマーが所属していて助かった。今も感謝している。
――「LJL」 Summer Splitを控えてBlank選手とPoohManDuコーチが加入した。
Spring Splitで僕たちのチームは4位。Summer Splitを控えて、より良い成績を出すためにはどのような方針でいくべきか話し合った。新しい選手を探すなかで、チームから無所属選手の名簿をもらった。名簿には有能な選手が多く載っていて、そこにはBlank選手の名前も。オーナーが僕たちにBlank選手について訊ねてきたので、「有名な選手で、世界大会でも優勝経験がある。もしうちに来たら日本で一番人気のあるチームになると思う」と答えた。それを聞いたオーナーが話をしてみたいと言い、Blank選手サイドも前向きな反応。本来は話すとなればDiscordかSNSを通じて話すのだが、オーナーは自ら直接韓国へ行って話すべきだと言う。当時はチームに通訳がおらず、僕が日本語を話せたので一緒に会いに行くことに。Blank選手に会って、「海外の選手を見ていると楽しんでいる選手が多い気がするけれども、僕が思うに、うちのメンバーたちは韓国の選手ほどではないかもしれないが本当に一生懸命やっている。Spring Splitは練習期間が短かったために成績が振るわなかったが、Summer Splitは違うはずだ。ポテンシャルの高いチームだ。Blank選手が来てくれればチームもLJLも発展すると思う。手助けをしてもらえないか」と伝えた。あとで聞いたところ、「オーナーが直接会いに来て、誠意をもって話してくれたのが気に入った。信頼感が芽生えた」そうだ。
――PoohManDuコーチまで合流することになったが事前に知っていた?
Blank選手が来るというのは知っていたけど、PoohManDuコーチまで来るとは知らなかった。Blank選手から同じチームで活動したいコーチがいるという話があり、チームから検討する旨を伝えたところ、いきなりPoohManDuコーチの名前が……! 周りにいた人たちも驚いていたし、僕も最高だと思った。それでPoohManDuコーチと面会するために、オーナーと一緒にまた韓国へ。ふたりが合流したことで「Summer Splitは優勝できるだろう」と思った。
――にもかかわらず「LJL」 Summer Splitでは低調だった。
僕たちは間違いなく上手くやれるチーム。でもチームメイトのほとんどが新人選手だった。TopレーナーであるDonShu選手は今シーズンからデビューしたばかり。元々所属していたReiya選手と一緒にプレイしたかったけど、個人的な事情で一緒にプレイできなくなってしまった。MidレーナーであるTaka選手はオーストラリアのチームにも所属していたが、日本での活動は2部リーグのみで、試合が生放送される1部リーグでの経験は初めてだった。SupportであるRaina選手は日本のアマチュアプレイヤーのなかでは上手いけど、練習のときとは違い生放送される試合ではかなり緊張していた。いきなりBlank選手という化け物クラスの選手が加わることになって、彼らもなおさら緊張しただろう。大会ではもっと緊張していたと思う。
――OdduGi選手から見たBlank選手の印象は?
個人配信でのイメージと変わらない。真面目な性格で純粋な、飾り気がない選手。好き嫌いがはっきりしていて見ていて楽しい。すごい経歴を持つ選手だが「経歴は気にせず同じ選手として接してほしい。ゲーム中に僕がコールをしたとしても絶対に合っているとは考えず、みんなも意見を話してほしい」とチームメイトたちに話していた。僕たちに対して、友達として接しようとしてくれた。
――1年間活動した「LJL」についての考えを聞きたい。発展していく可能性はどれくらいあると思う?
正直、以前の「LJL」がどうだったかについては詳しく知らない。でも「LJL」で活動しはじめたころと今を比べたら、Twitchの視聴者数がかなり増えた。試合会場であるヨシモト∞(無限大)ホールもほとんど満員になる。Blank選手が来たからか、韓国の掲示板を見ていても関心が高まっている。「LJL」が大きくなっているというのを直接感じている。また「LJL」のチームもたくさん投資をしていると思う。例えば僕たちのチームのスポンサーを見てみても、QTnetは九州地方で一番大きいIT企業だしサントリーもいる。少しずつ大きくなっていると感じる。資金面での問題はない。ただ、成長していくためには自国選手のスキルを引きあげる必要があるだろう。外国人選手に頼るよりも自国選手たちが頑張らなくちゃいけない。もし実力を引きあげられたなら、2021年ごろにはもっと高い評価を得られると思う。
――DetonatioN FocusMe(以下DFM)が「World Championship(以下WCS)」に出場することになった。どこまで勝ちあがると予想しているか、個人的に気になる。
プレイインは突破できるけど、グループステージは強敵揃いなのでさすがに苦戦すると思う。選手たちについてそれぞれ話すと、JunglerのSteal選手はチームに合わせたプレイをする。TopレーナーであるEvi選手は一番飛びぬけていて、日本で勝てる選手はいないかもしれない。彼に得意チャンピオンを与えつつ、Midレーナ―のCeros選手にはサポーティブチャンピオン、ADCのYutapon選手にはレイトキャリーを使わせて逆転勝ちをするケースが多かった。レーン戦に勝った場合は素早い展開で試合が終わることも多い。でもSummer Splitに入ってからCeros選手のプレイスタイルが変わった。これまではハイマーディンガー、カルマ、アジールなどをよく使っていたが、変化が必要だと考えたのか、最近はエコー、サイラスなども練習しているようだ。WCSなどの国際大会を経験したことで、変わらなくちゃいけないと感じたのかもしれない。結果的にDFMはMidレーナーがかなり変わった。これまでは五分五分で進めるためのプレイをしていたとしたら、今は相手を押しつぶして勝とうという考えで試合に臨んでいるようだ。
――これからの目標は?
昔デビューした時はTY選手(現Splyce所属のSC2選手)よりも年下だったが、今となっては古参選手になった。経歴だけを見れば、LoLのプロ選手たちのなかでも一番長いと思う。「LJL」で優勝してみたいというのがこれからの目標で、最終目標は「WCS」に出場すること。すばらしい成績をあげるのも良いが、個人的にはファンがいるからこそプロゲーマーが存在できていると思う。良い成績をあげつつ、ファンのみなさんからも愛される選手になりたい。
ソース - FOMOS
※前後編に分けて掲載された記事を、翻訳では1本にまとめています
[김용우가 만난 사람] 스타1에서 LoL까지 - '오뚜기' 송광호 이야기(1부)
[김용우가 만난 사람] '블랭크'와의 만남 - '오뚜기' 송광호 이야기(2부)
翻訳者クレジット
スイニャン(@shuiniao)
MIN(@M_U_Choi)
とんぼ(@lotonbol)
なつみ(@_SS64103)
※この記事はインタビュアーであるKenzi記者、Sengoku GamingおよびOdduGi選手の許可を得て掲載しています