公式サイトにて、開発ブログの新しい記事が公開されました。
今回はViの制作過程について、デザイナーのGypsylord氏が語っています。
公式記事
Dev Blog: From Vision to Violence – Vi's Creation | League of Legends
やあ、サモナーの皆さん!
開発ブログの新エントリーにようこそ! 今日はタイムマシーンで時間をぐっと遡り、Piltoverのぶっ壊し屋ことViの制作について、話を聞いてみようと思います。Viを作る過程には多くの困難がありましたが(Vi…で始まる言葉を考えることとか)、互いに結合し合うスキル構成をデザインした方法や、Leagueにおいて物を殴る方法が如何にたくさん存在するか、というような多くのことを公開できると思います。
では面倒事は抜きで、Gypsylord氏に登場してもらいましょう!
Chris "Pwyff" Tom
ワルいヤツがやって来た!
私がRiotに初めて来た日のことです。アイディア・ウォールに貼られていた、RiotZeronis氏の描いた「Piltover Enforcer(Piltoverの執行官)」のコンセプトアート。そこにはこんな注意書きがつけられていました……「コイツが実装されたら、ぜーーーーったいコスプレするね!」。私はそのコンセプトを見てすぐキュンと来て、Ziegler氏(当時のLead Champion Designer)にお願いし、彼女の制作を、私の最初のプロジェクトにしてもらったのです。
6カ月後、Viはリリースされ、ADCプレイヤー全てを混乱の渦に叩き込み、Liveバージョンの環境を恐怖に陥れました。このブログでは、私たちが行った変更の背後にあるデザイン上の決定を中心としつつ、開発過程全体を通したViのスキル構成の進化について、議論しようと思います。
Enforcer(当時Viはこう呼ばれていました)についての作業を始めた時、私が最初に行ったのは、彼女のゲームプレイに欲しい、核となるリズムについて考えることでした。コンセプトアートを主軸に据え、彼女の概要(巨大なグローブで銀行の金庫をこじ開けた過去を持つ、元犯罪者のワル警官)を聞いてから数時間後、彼女に必要な3つの要素を把握しました。
- 体の奥底から震えるようなインパクト──大きなグローブは大きなパンチ、通常攻撃ですら良い感触になるべき。
- 攻撃こそ最良の防御──Viは超攻撃的、彼女自身を守れているのは、彼女が先に殴っているから。
- 気取った飾りはなし──Viは戦闘の際をうろうろしたりはしない。ただ突っ込み続ける。
スキル構成の結合:あるデザイナーの悪癖
ボツになった、机上の構想としてのスキル構成(仮定上のチャンピオンのスキル構成)についてお話ししましょう。現在のVault BreakerとDenting Blowsの元となったアイディアが初日からあることに、気づくと思います。
Passive – Denting Blows
スキル使用後のViの次の通常攻撃には増加ダメージが付加され、対象のARを低下させる。
Q – Vault Breaker
Viは移動不可になり、2秒間籠手をチャージしてから前方へダッシュし、最初に当たったチャンピオンに大ダメージとノックバックを与える。
W – Come at Me
最初に受けたスキル攻撃を跳ね返すスペルシールドを自分に張る。
E – Crush
Viが籠手を近くの対象に叩きつけ、ダメージとスローを与える。キルされた敵は「gibbed(去勢済)」を受け、クールダウンがリセットされる間に、AoEとしてCrushのダメージとスローを発生させる。
R – Steampunk Assault
Viが近くの敵にダッシュし(射程と速度はXin ZhaoのAudacious Chargeと同程度)、対象にダメージと1秒間のsupressionを与える。持続時間の間、ViはSteampunk Assaultを再使用することができ、以下の3つの効果の内1つを追加効果として得る。
- Beatdown – Supressionの持続時間を延長し、増加ダメージを与える
- Slam – 対象をノックアップした後に地面に叩きつけ、近くの敵全員をスタンさせる
- Throw – 任意の方向へと対象を放り投げる
最終的に、Vault Breakerが上手く行っている理由の調査にまで立ち戻ることにしました。私が達した結論は、初期に自分で決めた方向性と同じポイントでした。Viの他の能力全てが、キャラクターの元型を伝えられていないだけだと。Crushは楽しいものでしたが、大きなパンチではなく、地面を叩いているような感触でした。Throwは素晴らしいプレイを作り出しましたが、敵を掴み上げるのにグローブを使う理由は? Come at Meは完全に受動的な、純粋に防御的なものでした──そもそも攻撃的なものではなかったのです。一方でVault Breakerは、私がViのプレイヤーに感じてほしいものを全て備えていました。攻撃的だったのです。インパクトもありました。Piltoverのワル警官が犯罪を退けるイメージと、とてもよく合致していました。
Vault Breakerを念頭に置き、私はViのスキル構成のほとんどをボツにすることにして、ルール─スキルがパンチになっていないのならボツにする─に基づいてもう一度作り直し始めました。ThrowとCrushはとても楽しかったのですが、パンチではありませんでした。私がここから学んだ良い教訓は、いくら素晴らしいメカニクスであっても、目標を達成する見込みがない場合は採用しないことが必要だ、ということです。私はまだ、ゲームにThrowを入れたいと思っていますが、Viには合わなかっただけなのです。
ゲームに受け入れられるUltimateを創造する
数カ月のアイディア出しを経た後、現在Liveサーバで見ることのできるスキル構成へと大部分が近づきました。Viのultimate以外。以下は、Assault and Batteryになる前のものです。
R – Power Slamよく育ったViに対して脆いチャンピオンをプレイしたことがあるのなら、Assault and Batteryがどれほど恐ろしいものかは、よくご存知だと思います。だからおそらく、このPower Slamを見て、「とても良いスキルに見えるのに、何故変更したの?」と思うでしょう。
Viは近くの敵(射程400)にダッシュし、アッパーカットを食らわせて空中に打ち上げる。0.5秒後、対象は地面に叩きつけられ、付近にいる全員をスタンさせる。
Power Slamには、鍵となる問題が2つありました。ひとつは、Unstoppable Force(Malphiteのult)の劣化版に感じられただけだったことです。Unstoppable Forceより射程が短く、スタンの持続時間も短く、AoEはもっと避けやすいものでした。もうひとつは、もっと重要なことでしたが、キャラクターとしてのViが、ゲームの中で独自の戦略的地位に就けていなかったということです。このスキル構成であれば、彼女の仕事はXin ZhaoやJarvan IVと同じものですが、Viがその2人の能力値を凌駕しない限り(これよりも後にもっと)、Cataclysmを持つJarvan IVよりも彼女をピックする理由はありませんでした。私はViのultimateに手応えを感じましたが、それが正しいものとして完成すれば、両方の問題を解決することもできそうだと思いました。
「Viは対象を1.25秒間ノックアップします。以上です」
私の意見では、全チャンピオンには、その役割の中で他に比べて選ばれる理由となるものがあってしかるべき、というのが理想的です。それぞれのチャンピオンには、他の誰も持っていないユニークなものが必要です。私たちがこれを正しく行えば、真価を認められるためにそのものの強力さに頼る必要がなく、その代わりにチームに提供する素晴らしいものについて、良いと感じられるキャラクターを作り上げます。Twisted Fateをピックする時、彼のglobalな移動能力で、Lv6になれば素晴らしいgankができるということを考えますよね。そういった、全体的な構成を実行するための選択肢は常に存在します。(ある程度までは)強さを考慮しないで、TFは常にそういった点で良い評価を得ているのです。
逆の例として、Volibearをピックする時、走り回って「何かをする」ことはできますが、独自の長所を感じられるのは、単に敵を上回った時だけでしょう。チームに投げ飛ばし能力を持つタンクが必要とされているのなら、Singedでやるべきです。単体に対して非常識なまでのキル能力を誇るtanky野郎が必要なら、Garenの方がもっと良いように見えます。投げ飛ばし能力を持つ熊に、単体対象のキル能力を要求するチームがあるかもしれませんが、Volibearは彼自身のユニークな能力をたくさん持っているわけではありません。結果としてVolibearは常に、彼の役割の中で、他チャンピオンと比べてどれだけ高い基本能力値を持っているか、という点で評価されているのです。
以上の哲学を念頭において、私はVi独自の地位を探し求め、そして開発室からAssault and Batteryを生み出したのです。Viをチームに入れるのは、なぜですか? それは、彼女がゲーム内で最高の、保証付きの長射程crowd control能力を持っているからです。Flashで逃げることもできません。Cleanseでも振り払えません。避けることもできません。Viは対象を1.25秒間ノックアップします。以上です。
LiveバージョンのViを検討する
私の当初の望みは、Viのようなキャラクターが戦闘に入るような時、敵が恐ろしい追尾性パンチ・ミサイルを避ける場合と、対象がAssault and Batteryを食らった後に行う場合についてはもっと、カウンタープレイが少なくなることでした。対象に接近して叩きのめすViには、全体的なカウンタープレイが存在します。敵にパンチを食らわせて画面を白黒にするために目標を定めるViは、理想からは程遠いものです。
さらには、味方チームメイトが敵を捕捉する準備をViが行えるのであれば、彼女が射程800以上先の敵を目標にするのはもちろんうれしいことですが、それも起こらないことです(もう一度、前述の画面を白黒にするためのパンチについて読み返してください)。Denting Blowsを持っているため、Viは長引いた戦いを好むべきですが、喧嘩好きなパンチ・ギャルという彼女のモチーフは、バースト・アサシンよりはもっと、喧嘩屋の系統に含まれるものだと思います。
ViがLive環境で大暴れし続けることに対し、私たちは監視を続けています。この文章が、チャンピオンデザインに対する私たちのアプローチ手法と、Viのスキル構成独自の成り立ちについて、皆さんの洞察になりますように。
August "Gypsylord" Browning
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