LoL Esportsに掲載された、Tyler 'Fionn' Erzberger氏著の“KT Bullets - The Uncrowned Kings(KT Bullets - 無冠の王者)”の訳です。リクエストにより掲載いたします。
なお文中の選手名は全て敬称略となっております。
「Bチーム」の出世
KT Rolster Aに対し「Bチーム」と位置づけられたBulletsは、StarTaleのLoLチームであったチームに取り残された、Ryu・Score・Mafaの3人を中心に結成された。残りのポジションを埋めたのは、roamと派手なプレイを愛する豹柄サングラスのジャングラー・KaKAOに、「Crazy Ragan」の異名を持ち、混沌とした状況に飛び込み荒々しい闘いを好んだtopレーナー・Raganの2人だった。
訳注:StarTale……Starcraft2およびLoLチームを抱えていた韓国のプロゲーム組織。LoL部門のチームは2012年5月に結成され、Ryu・Score・Mafaの他に、Locodoco(CLG→Najin→Quantic→引退)、Vitamin(KT Rolster A→所属なし)、kkOma(SK Telecom T1 Kコーチ)といったメンバーが所属した。2012年8月解散。
中堅どころのゲーミングクラブだったStarTaleが解散した時、残りの韓国チームと比べても、KT Bチームはそこそこのチームだという印象だった。しかし、2012年末に行われた最初のChampions Winterでの鮮烈なデビューにより、その印象は完全に払拭されることとなった。彼らはNaJin SwordやAzubu Blazeといった並み居る強豪にぶち当たるも、グループステージでは11-1という成績をもってグループのトップへと突き進んだ。当時の王者であったAzubu Frostが、グループステージで彼らを止めることができた唯一のチームだった──他の全てのチームが彼らに完敗した中、Azubu FrostのみがKT Rolster Bと引き分けたのだった。
最初期においてKT Bの中から彗星のように現れたのは、Score(AD Carry)だった。「不死身のScore」と評された彼の能力とは、集団戦の中でも生き延び続け、トーナメントに参加する誰よりも高いKDAをもって試合をキャリーする能力であった。準々決勝で相対した、兄弟チームであるKT Rolster Aとの対戦において、KT Bは多くの人々が考えているような「Bチーム」ではないことを証明したのだった。兄弟に対して3-1という結果で勝利をもぎ取った後、BulletsがOGN Championsの歴史における最初のRoyal Roader(訳注:ルーキーチームがトーナメントでいきなり優勝する名誉を指す)の座に着くことを否定する兆候はなかった──Championshipを制するのは、できたばかりの全く新しいチームなのだ。
次の相手はNaJin Sword、グループステージで彼らが完勝したチームだった──決勝戦への道筋は見えたかに見えた。だがBulletsはトーナメントの最も重要な部分で大失敗を犯し、Swordに対してたった1勝しか勝ち取ることができなかったことから、初めて多くの人々を失望させた。Swordは決勝戦でFrostを破り、一方でKT Bは同様に準決勝の敗者であったAzubu Blazeとの三位決定戦に臨んだ。だが、最後に勝ち抜けるチームに負けるというBulletsのジンクスは、ここから始まってしまったのだ。
CJ EntusによるBlazeとFrost両チームの獲得により、元々のCJ Entusチームを去ったプレイヤーは、ライバル組織に拾われることとなった。CJ Entusの誉れ高き宝であったinSecは、KT Rolsterの獲得希望リストのトップに名を連ねていた。KT Rolsterは新しいジャングラーとしてinSecと契約を結び、効果的なプレイを行う能力と高レベルなプレイ環境を望んだKaKAOをKT Rolster Aへと移籍させ、傘下の両チームを次のトーナメントの深奥まで到達せしめんとしたのだった。
Raganもまたチームを去ることとなり、KT Bはプロシーンでの経歴が全くない新人topレーナーであるSsumdayを迎え入れた。今やinSecを加えたBulletsは、Ssumdayがチームにもたらす可能性、さらに強いチームとして流星のごとく頂上を目指し続けるinSecという希望を携え、Champions Springに向けて非常に有力なチームと見なされていた。
嘘も信じれば
国際エキシビジョンであったMLG Dallasにて、KT Bはもうひとつの強いパフォーマンスにより、期待に応えることができた。準決勝にてCurseを2-0で下した後、ヨーロッパ最強のチームであるGambit Gamingに対し、2-1というきわどいスコアで勝利をもぎ取ったのだ。この戦いは、GambitのDiamondproxとKT Bの新星・inSecのジャングル対決という喧伝が成されていた。外貨を勝ち取り、昨シーズンに自分たちを負かした唯一のチームが全てのトーナメントに勝ち続けているという事実を胸にしたKT Bulletsは、第2期の目標を主要な韓国のチャンピオンシップでの優勝、と設定したのだった。
Champions SpringのグループステージでBulletsがセットを落とした試合は、ahq Koreaのような非プレイオフチームとの試合であり、グループのトップへとのし上がるために戦わなければならなかった。KT Bのグループにおいては、2位であったチームがどこであれ、待っているのはNaJin Swordである。BulletsとFlostはグループの中でどちらのチームが勝つのかを決める最後の一戦を、勝ったチームがディフェンディング・チャンピオンと対決するという一戦を行った。精彩に欠け、馬鹿にしたような、まるで勝ちたくないかのようなプレイを行ったKT Rolsterは、CJ Frostに敗北し、欲していた物をも失った。準々決勝の相手はMVP Ozone、トップ8を争うチームのスコアとしては、誰もが驚くグループステージ6-4という低いレベルのチームだった。
これが、「無冠の王」の呪いの、真の始まりとなった。OzoneはKT Bを3-1で破っただけでなく、KT Rolsterというチーム自体をNLBのマイナーリーグへと叩き落としたのだ。プレイオフを揺るがし、与し易い相手を得るという彼らの試みは、正に諸刃の刃となって彼ら自身を傷つけた。その後のOzoneは、準決勝と決勝戦で2回の逆転劇を演じ、Champions史上最大のシンデレラ・ストーリーを築き上げたのだ。Blazeを相手とした決勝戦で一方的な戦いを繰り広げるまで、13連勝にも渡る大立ち回りであった。
彼らの状況を再評価してみると、inSecは当時正しく、チームの要であった。韓国内のみならず、全世界を見渡してみても、彼が最高のジャングラーの一人であったことは、納得してもらえることと思う。inSecがtopレーンへの転向を決めたという衝撃的な発表があり、これによってKaKAOは、これまでの業績から、求めてきた成功を成し遂げた古巣のチームに戻ってくることとなった。またこれにより、Bulletsは全てのポジションに対し、オールスターとも言える精鋭プレイヤーを揃えることともなった。
通信戦争の再勃発
Champions Summer 2013は、彼らの大会になるかと思われた。同じグループでFrostと再会したKT Bは、またもグループステージを2位で通過したが、今回の彼らは、試合を放棄したとか、腑抜けた姿勢だとか評されるようなことは一切なかった。準々決勝の対CJ Blaze戦では、3試合目を投げた後、ビハインドから奮起した結果3-2で勝利、予選脱落の瀬戸際へと追い込まれた。3期に渡るチーム活動中において2度目の準決勝に到達したBulletsは、ついに過去の影を放逐することに成功、Frostに対して3-0での勝利を収め、前回のトーナメントでの大失敗を取り返すこととなった。事は全て上手く運び、彼らが王冠を手にする前に立ちはだかる相手はたった1チームとなった──e-sportsにおいて10年間にも渡りKTのライバルとして君臨してきた、SK Telecom T1である。
誰もが忘れないだろう決勝戦で、SKTの狙いをことごとく阻止したKT Bulletsは、2-0と優勝への道を先行した。あと1勝でSummerの王者に就くことができるだけでなく、ロサンジェルスで行われるSeason 3 World Championshipsへの切符まで手に入る……だが、そんな計画は白紙へと戻ってしまった。そう、SKTはただ死のうとしていたわけではなかったのだ。Bulletsが最初の2試合で行った試みは全て無駄に終わった。FakerとPigletという2人の素晴らしい才能が、2人のレーンの勝利が、Bulletsの技術を凌駕する様が、その日のディスプレイには大きく映し出された。
KT Bulletsは3試合をストレート負け、Champions史上において、決勝戦で一時は2-0とリードを取りながらも敗北した、2つ目のチームとなった。全てが上手く行き、そして失敗した。あの瞬間、World ChampionshipにBulletsが進出することは確実視されていたが、今やそれは非常に疑わしいものとなっていた。CJ Blaze、CJ Frost、そしてSK Telecom T1へと再び挑戦できたとしたも、2回連続で勝利することも危ういようであった。
だが、Bulletsが完全に沈黙してしまうことはなかった。Korean Regionalsの最初の2回戦の相手、FrostとBlazeを比較的容易に下した彼らは、しかして再び、ロサンジェルスへの道に立ちはだかる最後の相手として、SKT Telecom T1と対面したのだ。2週間後ですら、BulletsはSKTに対抗するための答えを出せていなかった。最終的には世界チャンピオンに対して1試合しかもぎ取ることができなかったが、彼らは韓国2位という地位を確立し、世界大会へと出場することとなったのだった。
呪いはその後も続いた─SKTはWorld Championshipの王者となったのだ─Champions Summerの決勝戦で3勝できていれば、Bulletsの機運はとても良いものたりえたのではないだろうか。
2位争い
WCG Korean qualifiersもまた、同じく悲しい出来事であった。Bulletsの対戦相手として予選を通過してきたBlazeだったが、この2チームの直接対決は初めてのことだった。BlazeはWCG Koreaで優勝しただけではなく、その後の中国でも他チームを寄せつけない全勝ぶりを見せつけ、決勝戦において中国のOMGを2-0で破り優勝を果たした。Bulletsを破って決勝に進出したチームが優勝するというトーナメントが、またひとつ生まれてしまったのである。
チーム結成から一周年が過ぎようとしていたが、メンバー変更は一切行われなかった。Champions Winter QualifiersでNaJin SwordとIncredible Miracle 2を辛くも打ち倒したBulletsはグループBの勝者となり、Champions Winterでは他グループの勝者との戦いを繰り広げた。以前のシーズンの既視感を伴いつつも、KT BulletsはCJ Blazeとの準々決勝へと駒を進めた。今回は、ライバルとの舞台に上がるために必要な勝利は、たったの4勝だ。決勝戦のひとつ手前、準決勝で彼らを待ち構えていたのは誰か? SKT T1に他ならない。
Bulletsは善戦し、敵に大きなリードを許すこともなかった。だが、単純に力負けしていた。相手が、League of Legendsの歴史で最も偉大なチームでさえなければ。結果はストレート3戦敗北。元CJ Frostのジャングラーで、現在はOGNの解説を務めるCloudTemplarは、引退に際してのインタビューで、SK Telecom T1 Kの存在する場所でプレイすることの困難さを語った──優勝できるチャンスなど全くないというのに、1日に12時間もプレイする理由が、どこにあると言うんだ?
KT Bulletsの韓国チーム中の勝率は、上から数えて4位である。チームの試合履歴は80試合を優に越え、内訳は勝ち74-負け44で勝率62.7%である。これに優るチームは、世界王者SK Telecom T1 Kの67-17(79.8%)、CJ Blazeの119-62(65.7%)、NaJin Black Swordの97-52(65.1%)のみである。これら3チームの共通点とは一体何だろうか? 彼らはChampionsの覇者であるだけでなく、地球上のあらゆる場所で行われる様々なトーナメントで優勝している。前王者であるOzoneおよびFrostと比較して、総合的なスコアでさらに上を行くKT Bulletsだが、主要な大会では初優勝の機会を伺い続けて久しい。優勝できたのは、MLGのエキシビジョンおよびAsian Indoor Gamesの2トーナメントしかないのだ。
Championshipsを通したBulletsの成績は、3-11である。SKT不在の時代が到来すれば、Bulletsこそが王者に相応しいと考える者は多い。だが、Championsの王座を渇望する限り、彼らはSKTと戦い続ける運命にあるだろう。それまでは、「無冠の王」と呼ばれ続ける──チャンピオンシップでの対戦相手としては強すぎるSK Telecom T1 Kだが、時代は常に新たな王者を待ち望んでいるのだ。
Leaguepedia
KT Rolster Bullets - Leaguepedia - Competitive League of Legends Wiki
原文
KT Bullets - The Uncrowned Kings | LoL Esports
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