KindredのChampion Insightsの訳となります。
Champion Insights: Kindred, the Eternal Hunters
この男女ペアチャンピオンの構想は、既存のロールにはない何かを作る、というごく簡単な目標から始まります。Kindredのケースは、1対1でジャングルに行くことのできる、新しいマークスマン・スタイルのダメージディーラーを作るという任務を負っていました。今回は、Fields of Justiceに忍び寄る一対の死霊が、なにもないところからどのように生み出されたのかお話ししましょう。
ゲームデザインについて
ジャングルに行くことのできるマークスマンのデザインには、独特の難題が山ほどありましたが、全く新しいコンセプトという訳ではありませんでした。実際、私たちは遠距離チャンピオンを無理矢理ジャングルで使うプレイヤーを見てきました。彼らが悪戦苦闘している点に注目することで、Kindredの完成に結びつく良いアイディアを得ることができました。
器用なジャングル・マークスマン
ジャングルで使われる遠距離チャンピオン(最近で言うとTwisted FateやTwitch)は、ゲームを支配するか、何もできないかの極端な結果になるという難点があります。彼らの早期ギャンクは、大抵破壊的(多くの犠牲者が出る目に見えないレッドバフ、またはTFの確定スタン)ですが、育てなかった場合は全く役に立ちませんし、育つにはキルやアシストによる資金が必要不可欠です。その上、ジャングルを回るお決まりのルートを知っていれば、彼らを倒す、または瀕死にできる場所が分るでしょう。なぜなら、彼らはレーンでの運用を前提にデザインされており、強力なカウンター、Lee SinやRek’Saiのようなジャングラーに対処する手段をほとんど持ち合わせていません。Kindred制作着手時に抱えていた問題と、制作中に解決することを期待していた問題の全てをここに記載します。「私たちは遠距離チャンピオンを無理矢理ジャングルで使うプレイヤーを見てきました。彼らが悪戦苦闘している点に注目することで、Kindredの完成に結びつく良いアイディアを得ることができました。」
Kindred(親族)に加わる
最初に、私たちはKindredに効率的なギャンクをして欲しいと考えていたので、これを実現させることから取り組みました。タイミングと連係がうまくいけば、キルにつながる可能性はありますが、確実ではありません。このチャンピオンのギャンク力を下げることで(特にTwitchやTwisted Fateと比べて)、彼らが戦うエリアに力を与えることができました。Kindredがお金に依存しないよう、ゲームの進行と共に確実にアイテムの恩恵を受けられるようにし、失敗してしまった伝染病ネズミのように役立たずな部分をなくしました。例えば、Kindredのマークは、とてもかっこいいスキルですが、Kindredにボーナスを与えるだけでなく、Kindredを相手にしないリーグのゲームに、心理的要素を加えるためにあります。Kinderedのスコアが10/0であろうと0/10であろうと、Kindredにマークを付けられたら、あなたはプレイを変えざるをえないでしょう。あなたがギャンクされるかもしれない、またはKindredがほんの少しプレッシャーをかけたいと考えたら、あなたは気づきませんし、十分ワードを置いていないのであれば、彼らがマップに姿を現さない限り何処にいるか知るすべはないでしょう。
ギャンクと言えば、KindredのギャンクはTwitchやTFのように強烈ではありませんが、彼らは十分強力で、キルを取れなくてもプレッシャーを軽減することでしょう。Mounting Dreadの効果を最大限に引き出した時の最大HPに対する割合ダメージは、Kindredのギャンクはタンクに対しても刺さるということです。また、WとQのコンボは、逃げようとする敵に対しても有効です。Kindredは、多くのジャングラーが持つ強力なCCを持っていませんが、代わりに追加ダメージを出すことができます。つまり、相手を遠ざける手段となるギャンクの際に彼らは特に強くなります。ですので、SejuaniやRek'Saiのようなジャングラーは、ギャンクに必要な打ち上げやスローを持っていますが、大抵ターゲットを倒せるほどのダメージを出せません。Kindredは逆にそれを持ち合わせています。
混合メタ
Kindredの参入は、ジャングルを回るもう一人のマークスマンを中心とした、風変わりなチーム構成をもたらす可能性を秘めています。マークスマンが2人いるチームは、相手のアサシンやファイターを寄せ付けないような、強力なピール能力を持ったチャンピオン、またはダメージを出す2人のマークスマンを援助するBlack Cleaverのようなアイテムを選ぶかもしれません。魔法ダメージを担う前衛の固いチャンピオン(MalphiteやAmumuのようなチャンピオン)よりも、混合ダメージを出すチャンピオンをフォーカスするでしょう。ポイントとしては、遠距離マークスマン・ジャングラーは、間違いなく今まで前例がないということです。あなた方がこのチャンピオンと共にどのようなチームを作るか楽しみです。最後に、KindredのUltについてお話ししない訳にはいきません。Lamb's Respiteは、Kindredがゲームに勝っているかどうかに関わらず効果的です。そして、チーム構成について異なる観点で再度考えるように働きかけます。この不死身ゾーンは、持続ダメージ構成のチームに瞬間火力構成に対抗する力を与えます。ダブルAD構成を強固なものにし、特に複数マークスマンのいるチームで効果を発揮します。Kindredを従来のチーム構成に入れたとしても、その需要の高い遠距離攻撃と共に、数々のユニークな手法をチームにもたらすはずです。
「Lamb's Respiteは、Kindredがゲームに勝っているかどうかに関わらず効果的です。そして、チーム構成について異なる観点で再度考えるように働きかけます。」
ストーリーについて
かなり初期の構想段階で、私たちはこのセット、ジャングル・マークスマンに着手しました。「マーク」した相手を倒すスキルを持ち、アシストやキルを得る毎に強くなります。そのため、このチャンピオンの成長性をいくつか模索することになりました。
これは、最終的に作成したChrisのスケッチの一枚です。弓から立昇る闇の狼を携え、光り輝く端正な羊。非常に私たちの興味を引きました。実は、このことは私たちを悩ませました。この二人の周りには、移り気な闇のようなものがまとわりついています。そこで、私たちは大きな決断をしました。通常、シナリオライターは、Runeterraという世界にいるどのようなチャンピオンにするか決めるために、いくつかストーリーの概略を考えます。彼らの力はどういうもので、どのような行動をするのか。私がこのコンセプト用に初めに書いたのは、「私を選んで」という行です。「もう一度聞く、子羊よ。どれを選べばいいのかね?」と言う狼と、「全部よ。狼さん。」とぶっきらぼうに返す羊を書きました。
部屋にこもって膨大な時間話し合った結果、KindredはRuneterra上初となる生と死をつかさどる神話的象徴になり得るだろうと。Kindredマークの粗い彫刻が施された古の墓や、マルディグラ(カーニバルの一種)とBilgewaterのグラウンドホッグデー(春の訪れを占う行事)スタイルのお祭りとの合同開催等、シナリオをいくつか考えました。Kindredのストーリーは、Runeterraの神話的背景を築くためにデザインされました。昔話や子供が歌う童謡、その裏に隠された起源を知らずに穏やかに過ごしているRuneterraの世界。
美しい弓を持った屈強な羊、口から舌を垂らし、闇をまとった狼。気まぐれで禍々しい二匹の獣。私は、多くの文化に存在する人格化された死について調査し始めました。そして、人間が初期に発見した有名な神話の多くは、墓地を中心に展開されていることを知りました。Kindredは異色の死神であるという意見にチームは賛同してくれました。辛うじて死を免れた人が小声で話す、生命の最後の瞬間に見られる死神。キャラクターの特徴を明確にするために、羊と狼の死がどのようなものなのか比べてみることにしました。羊を受け取ることは、命と安らかな死の祝福を意味し、狼から逃げることは、暴力的で恐ろしい結末を意味します。
マスクは、このチャンピオンにとって極めて重要であることを説明しましょう。羊に狼のマスクをかぶらせる(狼の場合も同様に)ことで、陰陽学を取り入れました。そのことは、彼らの性格を見出すことに役立ちました。一方に欠けているものを確実にもう一方に与えたのです。今回の場合、羊は物知りですが、わずかしか感じ取ることができません。それに対し、狼はあらゆることを感じ取りますが、賢さに欠けています。私たちは、このアイディアをとても気に入りました。この二匹は決してキルを奪い合うことがなく、常に調和しないのです。なぜなら、結局、羊と狼は二匹で一匹分だからです。
「私がこのコンセプト用に初めに書いたのは、「私を選んで」という行です。「もう一度聞く、子羊よ。どれを選べばいいのかね?」と言う狼と、「全部よ。狼さん。」とぶっきらぼうに返す羊を書きました。部屋にこもって膨大な時間話し合った結果、KindredはRuneterra上初となる生と死をつかさどる神話的象徴になり得るだろうと。」
外見について
作りたいチャンピオンのタイプが確定した後は(今回の場合、ジャングルを回るペアのマークスマン)、ラフデザイン行程に入り、このキャラクターが実際はどのような姿なのかいじり回しました。しかし、ペアのキャラクターは扱いにくいことが分かりました。二つ三つのアイディアを試みましたが、側にいるチャンピオンの上に少しかぶってしまうのでとても難しく、内部の支援も十分に得られませんでした。他のアイディアが思い浮かんでは消えるという状態が続き、四週間の制作期間のうち二週間を無駄にしていることに気づきました。環境を変えられる場所を探していたChrisは、しばらく喫茶店に行きスケッチを続けました。数時間後、彼は戻ってくると、スケッチブックを広げて見せてくれました。これです。
すぐさまこのコンセプトがしっくりきました。このキャラクターたち(獰猛な狼とおとなしい羊)は、移動している間は側に並んでおり、出現する時は一体で現れます。その一方で、JordanとMattは死のテーマについてしっかり前進していました。死のテーマは、このキャラクターたちにぴったり当てはまりました。狼は死を象徴し、羊は、少なくとも初めは、生を象徴していました。そして、2015年のチャンピオンのテーマとしていた訳ではありませんが、BardとTahm Kenchは両方とも伝承の特色が強く、急速に進みだしたKindredのテーマや容姿を引き立てていました。進展した、少なくとも内部では!そして、このコンセプトを関係者に見せたところ、とても気に入ってくれましたが、別のRioterたちからは思いもよらず厳しい意見を受けました。
「BardとTahm Kenchは両方とも伝承の特色が強く、急激に発展したKindredのテーマや容姿を引き立てています。」
「あなたたちは、とんでもない羊をゲームに投入するつもり?」
新しいことに挑戦する時、人は不安になります。でも、それは悪いことではありません。私たちが評価会を拡大し始めると、大量の意見がなだれ込みました。羊と狼は、途方もなく対極的なチャンピオンであるがゆえに、彼らを完成させる間ずっと牙や爪と戦わなければなりませんでした。このチャンピオンが好戦的になっていくにつれ、落ち着いてきましたが、羊と狼というキャラクターに注目し、洗練したいと思うようになりました。再度二匹に注目すると、二匹とも死を象徴しているので、マークを与えることにしました。実は二匹を表したマークです。二匹のキャラクターの双対性を強調するためでもありました。羊は善良で気高いばかりではありませんし、狼もそこまで残忍な訳ではなく、お互い独特の容貌を持っているため、白と黒のキャラクターから色とりどりのグレーに塗り変えました。私たちは、彼らを片方がいなければ存在できない陰陽のように扱い始めました。次に、彼らのアニメーションに取り掛かり、再度慎重にKindredに求められている動きについて意見を出し合いました。羊には跳ね回るよりも落ち着いた動作をさせ、一方狼にはふざけているよう動作をさせることにました。
結局のところ、私たちはKindredをリーグの文化的原型にしたかったのです。文化はRuneterraの世界を正確に具現化し、その世界の特徴を強調します。そして、ここが重要です。私たちは、Kindredが地上の物理的な形を持ったキャラクターではないとも考えています。Valoranの住人の知る限り、Kindredはただの言い伝えで、Runeterranの文化を正当化したものであるか、生と死の謎を人格化したものであると考えられています。彼らが実際に存在するかどうかって?さあ、それは死んでみないと分かりません。
「私たちは、彼らを片方がいなければ存在できない陰陽のように扱い始めました。」
数日後、さらにKindredの情報をお知らせする予定です!