Credit to : Brett "lincarnate" Farrow.
翻訳者より: 日本ではRiot Japanに伴い日本サーバーの設立も発表され、League of Legends Japan Leagueの一部チームで給与制のプロゲーマーが誕生しましたが、一足早くプロゲーマーと言う職業が確立した欧米では彼らはどれくらい儲けているのか?と言った疑問に、一例を元に具体的に答えた記事となります。
12月のストリーム統計を投稿した後に一番目にしたコメントは「これらの数字を知ることができるのは良いが、結局みんないくら儲けているんだ?」だった。手短に答えるのであれば「プレイヤー達と彼らの会計士のみぞ知る」なのだが、もう少し根拠のある推測をすることは可能だ。
早速、Søren "Bjergsen" Bjerg 選手のストリームによる収入を見積もってみよう。League of Legendsのプロシーンと馴染みのない方のために説明しておくと、Bjergsen選手は欧米で一番有名なチーム、Team Solo MidのMid-lanerだ。デンマーク出身だがアメリカで活動しており、彼のプレイするポジションにおいてはトッププレイヤーの一人だ。そのため、ヨーロッパとアメリカの両方の地域において莫大な人気を誇っている。普段、League of Legendsの配信をしている時にはTwitch.tvにおいて最も視聴されている配信者だ。2014年12月は平均で27,050人が彼の練習を視聴しており、二番目に人気のLoL配信者より9,000人多い。
Twitchの他の人気配信者同様、Bjergsen選手はストリームをすることによって3つの方法でお金を得ている:
- 広告による収入 (Ads)
- 月間購読者 (Subscriptions)
- チップや寄付
上記の3つのうち、ストリームの統計から予測するのが一番困難なのはチップや寄付だ。なぜなら散発的に起こる上にストリーム中の時のみ知らされるからだ。この記事にとって幸いながら、Bjergsen選手はそれらの通知を顕著に表示することはない(表示すらしていないかもしれない)ため、他の収入源に対して大きなものではない。他の二つの収入源に関心を集中させよう。
広告による収入
大体の公開配信サイト同様、Twitchは(過半数ではないとしても)収入の大きな割合を広告から得ており、その収入をコンテンツプロデューサーと分け合っている。動画広告は広告主により、再生数を基準に購入される。数字を分かりやすく表すために通称CPM (Cost per thousand impressions = 1000再生あたりのコスト。Mはローマ数字の1000を意味する)という単位が使われる。配信者は広告の再生数に応じた報酬を受ける。
配信者にとって残念ながら、一人のビューアーが必ずしも再生されただけの回数の広告を目にするとは限らない。その件に関してはTwitchのCOOであるKevin Lin氏が2012年に/r/starcraftにて非常に詳しく説明している。要約すると、広告によっては限られた地域・デバイス・時間帯にのみ再生されるものがあるとのことだ。故に、アメリカの視聴者のデスクトップPCでは6連続で広告が再生されていても、その間ヨーロッパのタブレット上では何も出てこなかったり、その逆も起こり得る。
広告の再生数に更なる影響を及ぼしているのがAd-blockers(訳注:広告をブロックするブラウザの拡張機能)の普及である。一部ではインターネット上の広告の10%近くがブロックされていると予測されており、同時にTwitchユーザーの80~90%がサイト上での広告をブロックしているとの調査もある。Twitchの代表者は視聴者の60~80%であると予測した。
これらの理由によりTwitchは支払い時に、カウントできない視聴者数を差し引いた実質上のCPM (Effective CPM, eCPM) を引き合いに出すことが多い。例えばとある配信者に1000人の視聴者が付いており、視聴者の100%が$2.00 CPM支払われる広告を見た場合と、2000人の視聴者のうち50%のみが同じ広告を目にした場合では、どちらの配信者も$2を得ることになる。一人目の配信者は$2.00のeCPMなのに対し、二人目の配信者は$1.00 eCPMといった計算になる。Twitchはこの単位を使用し、高いCPMを持ちながらも異なる充足率の他の配信サイトと自らのサイトを比較したりもしている。
Twitchが創立して間もない頃、広告による収入はTwitchと配信者で半々に分けられていたが、それ以来はその数字が公に確かめられたことはない。また、Twitchの提携規約の一部に「配信者は広告料を明かしてはならない」とあるため、数字は秘密に保たれている。しかしながらこの間Twitchの代表者が、新規の提携者の開始レートは$3.50 CPMであると発表した。すなわち、60~80%のad-block率が本当だとすれば$0.70から$1.40のeCPMからのスタートとなる。これはJoshua "FXOBoSs" Dentrinos、FXOpen StarCraft 2 チームの元オーナーが公表した$1.85 eCPMに近い数字である。
広告による収入の予測
数字は人気や寿命によって変化するため決定的なものを挙げることはできないが、根拠のあるいくつかのeCPMを元に予測をすることは可能である。Bjergsen選手の場合、新規の提携配信者よりも良い契約を結んでいることはほぼ確かなので、$1.00から$2.50の数字を目安としよう。
誰がいつ広告を再生しているのかをTwitchのAPIからは割り出すことはできないが、この点に関しても根拠の持った推測が可能だ。Bjergsen選手の配信を視聴した私の経験上、彼は一試合ごとに3分間の広告(6本の広告)を再生し、たまに待機時間が長いときはローディング中にもう少し多めに再生する。1ゲームを平均30分とすると1時間当たりの広告数の上限は12となる。また、下限は3と仮定しよう。
以下の表の額はBjergsen選手の2014年12月の平均視聴者数27'050人と合計放送時間の60.95時間に基づいている。
こうして全ての組み合わせを見ると幅広い可能性があり、12月の彼の広告による収入は$5,000から$50,000の間のどこかであると言える。Bjergsen選手の人気とTSMの交渉力を踏まえた上で現実的に考えると、eCPMは$1.50から$2.00であると推測するのが適切であろう。更に私の事例の経験を考慮すると一時間あたりの宣伝再生回数の平均は6から9となり、$15,000から$30,000(176万~351万円)の間に絞ることができる。言うまでもなく大金だが、これがTwitchの唯一の収入源ではない。
月間購読者
Twitchは自らと配信者にとっての別の形の収入源を設けるため、2011年に提携配信者に月間購読といった制度を提供し始めた。視聴者は月額$4.99を支払うことにより配信者をサポートし、広告を飛ばし、チャンネルのチャット上での絵文字や名前の横にアイコンを表示するなどといった表面的な変更にアクセスできるようになる。後々Twitchは広告を飛ばす機能をTwitch Turbo(月額$8.99のTwitch自体への購読)へと移行させたが、購読は今でも配信者をサポートする手段として人気がある。また、毎月得られる定期的な収入というものは一番の収入であるため、配信者達はそれを愛している。
CPMと違い、Twitchは購読に関しては配信者の取り分の割合を最初から公開している: 配信者が半分($2.50)、Twitchが残りの半分($2.49)を得る。しかしこれはCPM同様、交渉が可能であり、配信者は最高で60%($3.00)得ることができる。
画像ソース: YouTube comments
画像内の会話:
「購読料の何割がTwitchに 払われるのか知っている人はいますか?」
「配信者によって違う。最初は50/50だが私は60/40、即ち購読者ごとに$3得ている」
もっとも、それぞれの配信者に何人の購読者がついているかという点は公表されていない。配信者の多くが新規購読を知らせるポップアップを画面上に表示させるアラート機能みたいなものを使っているが、一日あたり何度起きているのかや、一月あたりの購読者数の減少率などを容易に分析する方法はない。推測する際のベストな判断材料は配信者達が公に発言した数字だ。
2014年秋、配信中にNightblue3選手が2,500人の購読者がいると言及しており、それ以来彼の視聴者数には大きな変更はない(数字を記録してはいないが、取り合えず小話として)。2014年12月の平均視聴者数は15,156であり、Bjergsen選手の半分より少しだけ多い。Nightblue選手のほうがBjergsen選手より購読者率が高い可能性やその逆もあり得るがそれは知りえないため、Bjergsen選手の購読者数はNightblue選手と同等であり、Nightblue選手の数字±1,000であると仮定しよう。購読料の50%と60%を得た、それぞれの場合の収入の推測は以下の通りとなる:
先ほどと同じ様に$3,750から$10,500と、幅広い可能性がある。しかし、仮にBjergsen選手が平均視聴者数の10%弱、または694,000人のTwitchフォロワー数の0.33%から購読料を貰えているとすれば、広告とは別に$6,000から$8,000(70万~94万円)の追加収入を得ていることになる。
最終推定
合わせると、Bjergsen選手のTwitchによる月間収入は$20,000から$40,000(234万~468万円)の間となる。これは誰にとってもアメージングな金額である。18歳のプロゲーマーにとっては尚更。Starcraft 2のコミュニティーが、Destiny選手が配信により$3,500(41万円)の月収を得ていることに驚愕したのはたったの4年前の出来事だ。Bjergsen選手とTwitchの両者にとって、このレベルの成功に達したことは巨大な業績だ。
(追記:もし自分でデータを見たいのであれば、Bjergsen選手の12月の配信の全データはこちらをどうぞ。)
記事の翻訳は以上です。※括弧内の数字は$1 = 117円換算後、万単位に四捨五入。
この記事はBjergsen選手のTwitch配信による収入のみを推測したものですので、その他の収入源(大会での賞金、スポンサーの支援など)を考慮すると総収入はもう少し増えるのではないでしょうか。
余談ですが、中国の選手の収入に関して先日Redditにてこのような話が話題になっておりました。
DouyuTVでWh1t3zZ氏の配信を見ていたら、Deft選手かPawn選手の年収が$1'200'000(約1億4000万円)であると発言していた。EDGで1年プレイする=世界大会の賞金の総額を得る、と言えるのだろうか?
Deft/Pawn earns $1.2 millions (7M RMB) a year, confirmed by Wh1t3zZ : leagueoflegends
……信じるかどうかは貴方次第です。
2015年1月30日、翻訳:あるふぁ(@AQ_Alpha)
編集:あおれんじゃ
参考リンク
人気ゲーム実況プレイヤーが稼ぎ出す1カ月の収入はどれくらいなのか? - GIGAZINE