魅了されてやまないプレイヤーもいれば、憎悪してやまないプレイヤーもいる。そんな個性的なLeagueのキャラクターであるTeemoについて、3人の重要人物が制作当時やキャラクターコンセプトについて語っている公式記事の訳となります。
The Birth of Evil: Teemo | League of Legends
彼のことが好きでしょうか。それとも嫌い?──もし彼のことが好きなら、素晴らしい狂い方をしていますね。Teemoは最悪です。
私たちはJeff Jew(プロデューサー)、Colt Hallam(シニアゲームデザイナー)、Brandon Beck(CEO)と語らい、Leagueで最も偉大な怪物を創造させたもの──そしてもっと重要な、彼が世界中で苦痛を課される存在になった理由、この2つを掘り下げました。
Teemoの悪夢的起源
Teemoが良いアイディアだと考えたのは、どんなサディストですか?
Brandon Beck:Teemoは本当に初期に生まれたものです。それは開拓時代まで遡ります──私たちは様々なアイディアをその辺中に散らかしていました。League Universeが一体になり始めた頃でした。Teemoという存在の結果、Yordleたちが出現して多くのチャンピオンたちが生まれたわけで、Amumuのような別の存在が起源ではなかったと思います。全ての可能性を作ったのはTeemoだとも言えるでしょう。
Jeff Jew:とてつもなく恐ろしい邪悪を構成するあらゆるものから、可愛らしい小さな男の子まで、皆さんにファンになってもらえるように、キャラクターの特徴を深めたいと思っていました。個人的には、私はモーグリやイウォークたちがのようなかわいらしい存在がずっと大好きでしたので、チャンピオンを多様化させた結果、印象が強く不利な立場を体現できる、小さいけれど力強いチャンピオンを制作するということに、とても興味深いものを感じていました。TeemoとAmumuの後、CorkiやTristanaといった、もっと勇猛で小さなキャラクターたちのデザインを始めました。彼らは全員、とても楽しく元気のある個性を持つグループとなり、チャンピオンロースターを豊かにしてくれました。
「……でも、彼はとってもかわいらしいんです!」
Teemoがそんなに(いらだたしいほどに)かわいらしいのは、なぜでしょうか?
Jeff Jew:私はTeemoの外見が心から気に入っています。Leagueのスタイルをまとった不朽のキャラクターであり、多様性の中でも明るい印象の方向性で、素晴らしいニッチを占めています。多くのプレイヤーが彼を最初に気に入る理由があるのです。面白いのは、彼の外見がゲームプレイの特徴とは対照的だということです──こいつは小さくてかわいらしく見えますが、ゲームでの実際のプレイを理解するまでは、彼がひどい奴だとはわかりません。
Colt Hallam:彼の外見に基づき、ゲーム内では可愛らしい偵察兵という特徴を与えようと、私たちはすぐに判断しました。私にはEagle Scout(訳注:アメリカにおけるボーイスカウト)とScoutmaster(訳注:ボーイスカウト隊で隊員をまとめる大人の隊長)の友人が実際にいたので、彼らから多くのインスピレーションを得て、このキャラクターを描きました。
Jeff Jew:最終的に私たちは、小さくてかわいらしい、似たようなキャラクターたちを何人か作り上げました。彼らはこうして生まれた仲間であり、同じ人種にまとめることができるだろうということになりました。私たちはルール(寝そべることができない、帽子が大好き、とかいろいろ)を作り始めましたが、まだ名前はついていませんでした。そうしたある日、Paul “Pabro” Bellezza氏が現れ「Jeff、オレはわかったぜ」というようなことを言いました。前の晩に彼が「スター・ウォーズ」のヨーダとヤドルについての夢を見たのは明らかでした。目覚めた彼は「Yordles」と言ったのです。
Teemoの工具袋の中で
Teemoがこんなにtroll的になってしまった経緯は、どういうことでしょうか?
Brandon Beck:スゴイ吹き矢を持った小さな偵察兵野郎を初めて見た時のこと、そしてすぐにゲームで彼が象徴するtroll的要素がわかった時のことを、はっきりと思い出します。彼が小さくてウザいクソ野郎になったことについては、何の不思議もありません。
Jeff Jew:彼には素早い存在であってほしいと思っていました。たとえば、GarenとKatarinaたちの世界では、この小さな存在は敵とどうやって戦うでしょうか? 彼は敵を圧倒しようとはしません──彼は素早く動き、吹き矢で目眩ましをかけ、敵を消耗させます。私たちがマッシュルームのアイディアにたどり着いた時、全てが一点に集まり始めました。彼の個性がはっきりしはじめ、敵を引き撃ちするだけの存在から、一定のエリアを掌握し、敵チーム全員を奈落の底へと突き落とす、イタズラ好きなクソ野郎へと変わっていったのです。
この過程で、私たちはいくつかの面白いステップをたどってきました。ぶっちゃけ、かつての彼はニューク・ショット野郎でした。私たちはいつも大好きなゲームへのオマージュを織り込むのが大好きで、これはステルス状態からレーザーで目標を定める「NUCLEAR LAUNCH DETECTED」へのものでした。このアイディアは確かにクールだったのですが、相互作用が極端に少なく、目指す方向性に合わないということで、結局は見解が一致しました。
Fan art by Tvonn9
Colt Hallam:ADCやメイジといったチャンピオンのロール概念を固める以前の道のりが、これです。私たちはユニークなプレイパターンを探るだけでした。偵察に出てチームメイトを導く、そんな存在として私たちはTeemoの制作を始めました。彼の当初のパッシブは「Pathfinder」とか「Leading the Way」とかいうもので──彼が通った後には足跡が残り、一時的な視界を得て、その後を歩む味方たちの速度を増すというものでした。ところが、これにはとても面白い点が2つありました。ひとつは、Teemoはもちろん脆い存在ですので、先行するという行為によって彼は殺されてしまう傾向にあったことです。ふたつめは、当時の私たちの技術が拙かったということです。想像できたことだと思いますが──このスキルは、100ユニットごとに透明なミニオンを1つずつ残す、という実装でした。もちろん、大規模な処理落ちを引き起こすまで、時間はかかりませんでした。
ニュークは私たちにとって2番めのultのアイディアでした。最初のアイディアは、視界が狭くなるという、真の恐怖でした。基本的には、たらふく毒を仕込まれた矢が当たると、超強いDoTで敵を打ち据え、6秒後には安らかな眠りに導く、というものでした。当初、対象にはダメージを与えていましたが、少ししてから、死なないというように変更しました。このスキルは当たった相手のマナをも一定量消費させていたので、非メイジのチャンピオンたちはそもそも完全に干からびてしまうことになっていました。何が言いたいかというと、bruiserたちにとっては地獄だったということです。スキルは持続時間が長かったり、ニュークダメージを与えたりというものではなくなり、そういったアイディアをやってみた後、偵察行為にふさわしい、罠を設置するというアイディアに決定したのです。
最後の仕上げ
Teemoの象徴であるマッシュルームは、どこから着想を得たのでしょうか?
Colt Hallam:Teemoの制作は終わりに近づいていましたが、私は地雷の作用を理解しようとして、自分の頭を壁に何度も打ち付けていました。地雷は、容易に有害な仕組みになりうるからです。結局、DoT効果にするということで落ち着きました。その時点で私たちにはビジュアルリソースが全くありませんでしたが、私にはやろうとしていることについてのアイディアもありませんでした。ある朝、私はぼーっとしながらサモナーズリフトを眺めていました。特に何を見るということもなく。ふと、ジャングルの中に小さなマッシュルームがあるのに気づきました。私はアーティストたちに駆け寄り、そのマッシュルームをマップから切り取ることができか、それらのクオリティを全て「増すことが」できるか、と半狂乱で頼み込みました……完璧でした。爆発するマッシュルーム=毒のDoT。アイディアは上手く行き始めましたが、もっとわかりやすくなるぜ、と私たちは言いました。実際、上手く行った理由を理解できたとは考えていません。
それが最後に出たアイディアだったのははっきりしていますが、ローンチ後も彼には少し変更が加えられました。どこかの時点で彼には「アナグマのダンス(badger dance)」を追加し、彼のステルスやスピードといった面も最終的に少しアップデートされました。最重要変更点も忘れませんでした──Badger Teemoには既にマッシュルームがありましたが、矢を蛇に変えることで、オマージュが完璧になったのです。
たくさんのTeemoのスキンたち
Teemoのワードローブにはどのようなものが関わりましたか?
Jeff Jew:昔、しばらくの間スキンを統括していたことがありました。チャンピオンごとに2つのスキンができ出す前に、どういうわけかTeemoには7つのスキンができてしまっていたと思います。どういうことかというと、データがあったのです──Teemoのスキンはプレイヤーにとても人気がありましたが、私にとっても、嫌いなスキンはないと言わせてください。
私のお気に入りはAstronaut Teemoですが、それにはすごい理由がひとつあります。スキンを使う時はいつもそれに関したジョークを言っていたんですが、それは私の誕生日にChance “SpaceStallion” Rowe氏がプレゼントをデスクに置いてくれるまでのことでした。彼は空き時間を使って、試作品の実物大模型を作っていたんです。もちろん完成してはいませんでしたが、私は心底から叫びました。「これを出そう!」って。
好きか嫌いか
待ってください、Teemoを本当に愛する人もいるってことなんですか?!
Jeff Jew:彼は実際、可愛くて、かつクソ野郎という二極化したキャラクターです──皆さんが彼を好きでも嫌いでも、議論の種ではありますよね。彼は間違いなく、最もユニークで記憶に残るチャンピオンのひとりであり、Leagueへの大きな入り口にもなっています。彼の帽子はかっこよくて、彼はかわいくて、他のいかなるチャンピオンよりもLeagueを遊ぶプレイヤーを増やしているというのは、おそらく間違いありません。彼は偉大なマスコットです──中立的でありながらも、さまざまな個性を持つチャンピオンの中で興味深く、Leagueの多様性を大きく代表する存在なのです。結論として、彼は世界中にアピールできるキュートなキャラクターなのです。
Colt Hallam:どんなゲームにも悪役が必要ですが、私たちのゲームの悪役はかわいらしい悪役です。好きでも嫌いでも、彼の周りには大きな情熱が渦巻いています。Global tauntは実際に存在しますし、この小さな野郎をぶっ殺したり、逆に残りヘルスが少ない時にマッシュルームを踏んでびっくりしながら死んだり、といったことはLeagueの中でも他に存在しません。プレイヤーが彼のプレイを大いに楽しむ様子と、彼の相手が憎悪に震える様子、この2つは素晴らしい相違です。
Brandon Beck:今日のLeague、すなわちチャンピオンロースターに莫大な多様性を持つゲームで、Teemoは非常に象徴的な名声を獲得しました。冷酷さと滑稽さに片足をそれぞれ踏ん張っている彼は、League全体のメンバーの中でもはっきり認めることができます。それが、彼が多くのプレイヤーの皆さんに幅広くアピールしている理由の一部だと、私は考えています。Teemoはゲームを楽しくしますが、彼にできることは、他の多くのチャンピオンたちにも可能なことです。彼がLeagueで最も二極化したキャラクターになっているのは間違いありませんが、彼を構成する要素が全て結合してこそ、この幸運は生まれているのです。
プレイヤーの皆さんがTeemoに強く執着しているという事実は、非常に印象的です──帽子のせいでしょうか、よくわかりませんが彼には多数のスキンが揃っており(ごめんね!)、Astro Teemoのミニゲームもあり、teemodies stream(訳注:Teemoが死ぬ様子だけを配信し続けている配信)すら存在しています。彼が多面に展開してゆき、彼が持っているユニークな特徴が、プレイヤーの皆さんにとってLeagueとの出会いや繋がりになっていくことは、好ましく思っています。つまりですね、彼はゲーム内でもユニットの測定単位だってことなんです!(訳注:Teemoのキャラクター表示はゲーム内で100ユニットに相当し、Teemoの大きさで射程等を測ることが可能)
Leagueの新規プレイヤーにとって、彼は素晴らしい道標です──私たちは悪人面だけでなく、くすくす笑いも誘いたいと思いっています。彼のかわいらしいテーマにある皮肉は、実際の彼が、敵の屍の上で喜んで踊ってしまうような悪いやつだというところにあります。数年前にリークで公開されてしまった、未完成のDominion Cinematicを思い浮かべてください──Teemoは姿を現すと、くすくす笑いながらかっこよく身を翻し、Mordekaiserにblindをかけ、そして惨たらしく死にます。Teemoの表現としては、最高のものです。
Fan art by robynlauart